美容ナース業務の施術別注意点を現役主任ナースが現場に即して解説!

今回は美容看護師歴5年目で現在は主任ナースとして働いている筆者が美容ナースの施術別注意点を解説していきたいと思います。

まずは筆者について簡単に紹介させていただきます。筆者は学生時代を東北で過ごし、看護学生時代から美容看護師という道を意識し始めました。そしてまずは臨床経験を重ねようと考え、新卒で都内の大学病院に入職し、経験を重ねました。

数年後、目標であった美容看護師になるべく大手美容クリニックに転職し、そこで美容外科、美容皮膚科の知識やスキルを身に付けました。現在は脱毛専門クリニックでパート勤務をしながら、小規模クリニックで管理職もしています。

現場で働いているからこそわかる施術ごとの現場での準備やドクターとの連携、起こりうるリスク、患者さんへの対応、アフターケアなどを今回はお伝えしていきますので、ぜひご参考にしてみてください。

美容外科の主要施術における施術別注意点とは

まずは美容外科の主要施術における施術別注意点について解説していきます。

もちろん美容外科の手術には様々な手術があるのですが、その中でも今回は人気のある二重埋没法、二重切開法、脂肪吸引、豊胸手術についてご紹介していきたいと思います。

二重埋没法で注意するべきこと

二重埋没法で注意するべきことについて見ていきましょう。

二重埋没法はまぶたの皮膚を切開せずに糸を埋め込むことで理想の二重を作る手術方法です。

もしもの時は糸を取れば元の目に戻すことができることや、ダウンタイムが少なくて済むといった理由から美容外科の中でも常に人気No.1の手術です。筆者も大手美容クリニックに勤めていたときには毎日10件以上の二重埋没法が行われていました。

ドクターによって使用する麻酔の濃度、シリンジや針の大きさが異なっていたり、クリニックによっては二重埋没法にも種類があり、種類ごとに使用する糸が異なっていたりするので、どのドクターの埋没法の準備をするのかの把握は重要となります。

また埋没法は所要時間が10分〜15分程度の手術でありスピード感が求められる場合が多いです。医師が手術室に入ってきたらすぐに始められるように麻酔の点眼や消毒などを済ませておき、手術中は先生が術野だけに集中できるように介助を行います。

新人の頃は先生の手術の妨げにならないように正確な介助をすることばかりに必死になってしまいますが、少しずつ余裕が出てきたら緊張しながら手術を受けている患者さんへの声かけも意識して行っていきましょう。

埋没法は手軽にできる手術のため非常に人気ではありますが、目への負担は二重切開法よりも大きな手術です。よくある術後の症状としては目のゴロゴロが挙げられます。術後1週間ではほぼ全員に目がゴロゴロする症状は見受けられ、時間の経過とともに症状が落ち着いてくることがほとんどです。

しかし稀に症状がなくならず、角膜が傷ついてしまっていたり、糸を取った後も目の内側の粘膜自体が変形してしまっていることで症状が残ることもあります。そのような場合にはドクターが診察にあたることにはなりますが、看護師自身も埋没法にもリスクがあるのだと理解しておく必要があるでしょう。

二重切開法で注意するべきこと

二重切開法で注意するべきことについて見ていきましょう。

二重切開法は皮膚を切開し内部組織の操作をすることで永久的な二重を作る手術です。

埋没法と比較するとダウンタイムの期間は長くなりますが、一生物の二重を手に入れることができる、埋没法よりも細かい部分までデザインの希望を叶えてもらえる、目への負担が少ないといった理由から切開法を選ぶ患者さんも多いです。

手術時間は30分〜1時間程度と埋没法と比べると手術時間は長くなります。そのため麻酔が切れて痛みを感じていないか、手術中の姿勢はつらくないか、気分不快はないか等、患者さんの苦痛をできる限り取り除けるように配慮していきます。

そして二重切開法は埋没法よりもダウンタイムが長くなるため、術後に患者さんが感じる不安も大きいです。ダウンタイムは個人差による部分が大きいですが、強い腫れは10日から長いと2ヶ月程度続き、さらに形が完成するためには約半年を要すると言われています。

どれだけ手術前に「ダウンタイム中は正確な形の評価を行うことは不可能であり、内部組織の損傷もあるため再手術するとしても半年間は待たないといけない」と説明していたとしても、術後1ヶ月くらい経過したところで「理想の二重になっていない。左右差がある。早く修正手術をしてほしい」と言われる患者さんも少なくありません。

ダウンタイム中はみなさん不安です。もちろんドクターからも患者さんに対して話をしますが、多くの場合は患者さんに医学的に正しいことを伝えることが多いです。だからこそ看護師は患者さんの不安な気持ちに寄り添い、気持ちを共有する立場であることが大切となります。

脂肪吸引で注意するべきこと

脂肪吸引で注意するべきことについて見ていきましょう。

脂肪吸引は普通のダイエットではできない部分痩せを叶えることができる手術です。そして手術により脂肪を除去するだけでなく、細胞の数自体を減らすことができるため、一度脂肪吸引をした部分には脂肪がつきにくくなるというメリットがあります。

ダウンタイムの期間は長く、ダウンタイム中は仕上がりをきれいにするために患部をきついサポーターで覆って過ごす必要があるので、夏場よりも冬場に需要があります。

顔の脂肪吸引や二の腕の脂肪吸引のような範囲が狭い箇所の手術の場合は局所麻酔のみで行うこともありますが、大半が硬膜外麻酔や静脈麻酔を併用して手術を行います。

硬膜外麻酔は背骨の中にある脊髄を包んでいる膜の外側に細い管を留置し、そこに麻酔を注入し術部の痛みを緩和する方法です。手術中に痛みを感じることなく手術を行えるというメリットはありますが、意識はあるため恐怖感、不安感を覚える患者さんは多いです。

手術中に気分不快は出ていないか、しっかりと痛みのコントロールができているかを確認しながら手術を行っていくことが重要です。

静脈麻酔は点滴により無意識下で手術を行う方法です。無意識下で行う方法に全身麻酔という方法もあるのですが、静脈麻酔は自発呼吸、全身麻酔は人工的な呼吸であり、一般的に静脈麻酔の方が身体的負担が少ないため、静脈麻酔を採用するところが多いです。

意識がない中で手術を進めることができるため患者さんは痛みや不安感を感じることなく手術を受けることができるのですが、看護師側は呼吸管理を確実に行っていく必要があります。麻酔科医が同席して手術を行うことが多いですが、看護師も常にモニターを見ながら患者の全身状態が保たれているか見ながら手術を進めていきましょう。

豊胸手術で注意するべきこと

豊胸手術で注意するべきことについて見ていきましょう。

豊胸手術は1年を通して女性に人気のある美容外科の手術です。

大きく3種類に分けられ、ヒアルロン酸豊胸、バッグ豊胸、脂肪注入豊胸と豊胸に使用する内容物によって種類分けされます。

一番手軽に行えるのはヒアルロン酸豊胸です。

ヒアルロン酸豊胸は局所麻酔のみでの手術が可能で、ダウンタイムも少なく、他の2種類に比べると金額も安価なため手軽に豊胸手術をしたい方に人気です。ヒアルロン酸は何かトラブルが起きた時にも薬で溶かして元に戻すことができるというメリットもあります。

ただし時間の経過とともに体内に吸収されていくため持続期間は数ヶ月〜2年ほどと短く、大きさを維持するためにはメンテナンスを繰り返し行う必要があります。

続けて豊胸手術の中でも歴史のあるバッグ豊胸です。シリコンバッグが有名ではありますが、最近ではより安全性の高いバッグも開発されています。

他の方法では1、2カップ程度のサイズアップが限界ですが、バッグ豊胸では3カップ以上のサイズアップも可能なため、理想の胸の大きさを手に入れられるのがメリットです。

ただし手術の際には内部組織を剥離していくため術後の痛みが大きく、1ヶ月ほどつらい痛みが続く方もいます。またバッグを入れるためにある程度皮膚を切開する必要があるので術後の傷跡が目立ちやすいというデメリットがあります。

脂肪注入豊胸は脂肪吸引して得た自分の脂肪を胸に注入してサイズアップができる方法です。太さが気になる部分の脂肪吸引で部分痩せができ、大きさを出したい胸のサイズアップができるため人気があります。そして3種類の中では1番自然な柔らかさを出せると言われています。

しかし、もともと痩せ型の方の場合は十分な量の脂肪を集めることが出来ず不適になる場合があることや、大きくサイズアップすることは難しいというデメリットもあります。

いずれの方法も体内に外から注入、挿入する必要があるので感染のリスクが他の手術よりも高いことを意識し、正しい清潔操作で手術を行っていく必要があります。

またバッグ豊胸のあとは拘縮という組織のこわばりを予防するためにマッサージが必要となることも多いので、その指導を看護師が行います。

豊胸手術といっても方法によりメリット・デメリットがあるので術式ごとの違いをしっかりと理解し患者さんと接する必要があるのです。

美容皮膚科の主要施術における施術別注意点とは

ここからは美容皮膚科の主要施術における施術別注意点について解説していきます。

美容皮膚科の施術も多岐に渡るのですが、その中でも最近人気の高いレーザー脱毛とHIFU(高密度焦点式超音波)の2つの施術についてご紹介していきたいと思います。

レーザー脱毛で注意するべきこと

レーザー脱毛で注意するべきことについて見ていきましょう。

少し前まで脱毛といえばエステ脱毛が主流でしたが、エステ脱毛は効果が永久的ではなく、脱毛を繰り返し行う必要がありました。しかし近年では永久的な効果がある医療レーザー脱毛が徐々に安価で受けれられるようになってきたことや、男性向けの脱毛クリニックも増えてきたことからレーザー脱毛の人気が一気に高まりました。

レーザー脱毛は比較的リスクの少ない施術ではありますが、施術を繰り返していくうちに逆に毛が濃く太く硬く生えるようになってしまう硬毛化という副作用が起こる可能性があります。

なぜ硬毛化は起こるのかというメカニズムはいまだに解明されていませんが、何度か脱毛を繰り返していくうちに硬毛化が明らかになってくることが多いです。

硬毛化した場合の対応はクリニックにより様々ですが、施術の都度硬毛化が起きてないかを確認し、硬毛化が認められた時点で早めに対応できるようにしていく必要があります。

HIFU高密度焦点式超音波で注意するべきこと

HIFUで注意するべきことについて見ていきましょう。

HIFUとは近年人気が上昇してきている超音波によるリフトアップ治療です。

肌の土台であるSMAS筋膜に直接働きかけたり、肌内部のコラーゲンの生産能力を高めたりすることで若返りを叶える治療になります。

ダウンタイムもなく、直後から洗顔やメイクができるほど手軽な治療ですが、もちろん副作用はあります。

HIFUは肌の内側に強力な熱エネルギーを加えるため、稀に肌表面にも火傷を起こしてしまうことがあります。火傷は早急に対応すればすぐに治りますが、そのまま放置してしまうと跡となって残り、患者さんからのクレームになってしまいます。

赤み、水疱はできていないか、患者さんから肌のひりつきの訴えはないかしっかりと確認します。もしも火傷のような症状が見られた場合にはドクターに報告し、適切な処置を迅速に行えるようにしましょう。

またHIFUは深い層までアプローチできる特性上、機械の使用方法を誤ると顔面神経麻痺を起こしてしまう可能性もあります。正しい技術と知識を持っていれば防げるリスクのためしっかりと勉強した上で施術に臨むようにしましょう。

正しい知識と技術で患者さんをサポートしていこう

ここまで施術別の注意点をご紹介してきました。

クリニックに来院される患者さんたちはみなさんが「今よりもきれいな自分になりたい」という気持ちを持って来院されます。

その希望を叶えるのも悲しい結果にしてしまうのも私たち看護師の力次第です。患者さんにとって新人、ベテランは関係ありません。そして私たちの努力は必ず患者さんに還元されます。常に向上心を持ち知識と技術の習得をして患者さんを笑顔にできる美容ナースを目指して頑張っていきましょう。

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つーさん
岩手県出身。アラサー。学生時代は地元で過ごし、新卒で都内の大学病院に勤め看護師生活をスタート。美容ナース歴は5年目。