プロフェッショナルな美容ナースとは〜あなたの武器はなんですか?〜

美容ナース歴13年の私が、ここまでのナース人生を振り返ります。脱毛クリニック→美容皮膚科、美容外科→アートメイククリニック→アートメイクフリーランスナースとして独立を経験してきましたが、それぞれに得られるものがたくさん有りました。これから美容を目指すナースさんへ向けて、転職、キャリアプランの指針となれたら嬉しいです。

美容皮膚科で得られること

まずはじめに、最も長く勤めた大手美容皮膚科勤務で得られた事についてお話したいと思います。そこの大手クリニックは、良くも悪くも新しい治療法をどんどん取り入れて、メニューを刷新していく、ということはあまりありませんでした。その代わりに、最低限おさえておくべきメニューはちゃんと導入している形です。

患者さんに長く通っていただけることも多いですが、毎日の来院数が多く待ち時間が長いといったクレームなどもよく耳にしました。
その様な状況の中で勤務して得られたものを以下にご紹介致します。

①あらゆるお悩みに対応できる力が得られる

大手にいると、基本的には全てのお悩みに対応できる治療法が用意されています。
しみ、そばかす→ピーリング、光治療、スポットレーザー、美白美容液導入、美白内服薬と外用薬
肝斑→ピーリング、トーニングレーザー、美白内服薬と外用薬
ほくろ→炭酸ガスレーザー、電気メス、オペ、光治療
ニキビ→ピーリング、光治療、炭酸ガスレーザー、美白美容液導入、ビタミン剤内服薬、ニキビ治療外用薬
毛穴→ピーリング、光治療、炭酸ガスレーザー、トーニングレーザー、美白美容液・保湿美容液導入
たるみ→ハイフ、サーマクール、高周波レーザー、ヒアルロン酸注射
シワ→ヒアルロン酸注射、ボトックス注射、血小板注射、成長因子注射
痩身→脂肪溶解注射、レーザー、超音波、内服薬
などですね。

私が在籍していた当時(約5〜10年前頃)の治療法ですので、現在はきっとより多くの選択肢が有るのではないかと思います。
こう見ると、一つの治療法でも色々な悩みにアプローチ出来ることか分かりますね。一つの治療法を深く知ることは、イコール、幾つもの悩みを解決する方法を知ることになるわけです。

②スピード感を持って仕事に臨める

大手は毎日たくさんの患者様がご来院なさいます。
いかに待ち時間を出さずに数を捌いていくかの戦いです。
一つの治療につき所要時間が大体決められており、入室から退室まで無駄のない動きをしなければなりません。

ゆとりある時間を提供することは出来ませんが、パッと来てパッと帰りたいようなお忙しい患者様もいらっしゃいます。どちらの方々にも同じ時間で同じクオリティを提供する、効率や的確さが身につくでしょう。

③アップセル法や営業法を学べる

これは、知りたい方もいれば全く興味がない、むしろ嫌悪感を感じるという方もいるかと思います。
大手では部署により分業がしっかりとなされています。その中でカウンセラーと呼ばれる部署があり、彼らがドクターの代わりとなって先ずお客様のお悩みを伺い、それに合わせた治療法やお値段のご案内をしています。

ですが患者様の中には、医療者でない人に相談したくない!という方も少なからずいらっしゃいます。
するとカウンセラーから、施術中にナース部署の方で〇〇治療法について少しご案内してもらいたい、という旨のメッセージが来たりします。
これは確かに営業(アップセル)の時もあるし、本当に必要な施術である時もあります。
どうしたら上手くその患者様に治療法をご案内できるか考える力も付きますし、もし難しい場合にはカウンセラーからアドバイスを得てそれを実践することもできます。

クリニックによってはその営業成績をインセンティブとしてフィードバックしてくれるところもあり、その場合はモチベーションに繋がるというメリットもあります。

美容外科で得られること

元々美容皮膚科のナースだったのですが、勤務していたクリニックが美容外科も併設することになり、僅かな期間ですが、経験出来たオペ介助等についてお話ししたいと思います。

①美容知識の幅が広がる

例えば女性の多くが気にしているたるみ。
これを美容皮膚科の範囲で治療するならば先述の通りになりますが、やはりそれでも追いつかなくなる時が必ずやってきます。

その時、皮膚科勤務時代であればなんとなく知っている糸リフトと、切開リフトをとりあえず紹介します。「皮膚科の治療よりも、根本的な治療ですから良いと思いますよ。カウンセリング予約はご自身でお取りください」。これではかなり人任せですし、今思えばプロとしてどうなのでしょうか。

オペに実際についてみることで、術式やダウンタイムの過ごし方、オペの経過や結果を知ることができます。皮膚科治療、外科治療のメリットデメリットを正確に伝えて、患者様に正しく選択肢を与えることができます。選択肢が広がった患者様は皆様、喜んでその知識を吸収して下さいます。
そこで信頼関係が生まれ、指名やリピーターに繋がったり、顧客満足度の向上にも直結します。

②自分自身が受ける治療の選択肢が広がる

美容医療の世界に身を置くと、美意識が著しく上昇します。
外科にいれば尚更のこと、皮膚科治療だけでは満足いかなくなり私自身は1〜2年に一度、何らかの外科治療を受けるようになりました。

クリニックでパワープッシュされているメニューが本当に良いのか?巷で流行っている治療は実際どうなのか?そういったかなり気になる内容も、自分自身がオペにつくことで判別できる力が身につきます。
すると、いざ自分が治療する時にはこの治療がベストだな、ということが分かるようになり、皮膚科にいた頃よりもなお一層良い治療を自分自身が選択できるようになりました。

③ドクターの腕が分かる

かなりナイーブな話題であまり話してはいけないことかもしれませんが、やはりドクターも人間ですから器用不器用はありますし、得意不得意だってあります。
例えば自分の大切な人(お客様、友人、家族など)が間違った治療や、あまり相性の良くないドクターを選びそうになってしまった際にも、軌道修正してあげることができます。

オペは人生に何度もするものではありませんし、やはり高額な治療です。
絶対に後悔させないように、できる限りの情報を集めて最も最適な治療を受けさせてあげられるよう、手助けしてあげる事もできるようになります。

脱毛クリニックで得られること

少し忙しい脱毛クリニックだったので、スピード感は大手とほぼ変わらず毎日忙しい日々だったと思います。
一概に脱毛レーザーと言ってもガスタイプ、ジェルタイプ、その中でも新型旧型と、様々な機械を使用し、毛や皮膚の状態に合わせて選択していきます。
やけどや照射漏れなどのクレームがよく聞かれる業界で勤務して得られたことについて以下でお話ししていきます。

①脱毛のプロになれる

脱毛は出力と打ち方、あとは毛の処理法や皮膚の伸展の仕方、皮膚状態や皮膚の色などの知識が十分なレベルに到達した時、初めて最高の結果が得られます。
脱毛なんて誰がやっても同じだと思っていましたか?それは間違いです。
やはり何事も鍛錬は大切で、長くやっていると照射漏れは殆ど無くなります。

②忙しい時間の中でいかに効率よく動くかを知ることが出来る

大抵の脱毛クリニックは、毎日コース消化で予約がいっぱい。そんな中で患者様が遅れてきたり、きちんと毛をシェービングして来なかったり、痛がって進まないなどの事があると、かなり焦ります。

ヘルプでもう一名入ってもらうことも多いですし、どこからどういう流れで照射して行けば最もスムーズに終わるかを頭で考えて即実行します。とにかく時間内に施術を終わらせるために命をかけている!と言っても過言ではありません。

アートメイククリニックで得られること

アートメイクは私が思うに、今美容の中では最も勢いのある分野だと思います。
アーティストの腕一本で技術を提供する、ナース施術の中でもかなり難易度の高い美容治療です。
客層としては、美容皮膚科層とも少し違う、強いて言うなら若干ですが脱毛層が被っているのかな、と思います。
案外美容にそこまで詳しい方ばかりではないと感じますが、すごく興味が有る方も多く、そういったお話で盛り上がりながら日々施術に臨んでいます。
そんな中で得ることができたものは以下の通りです。

①責任感の重さを知る

皮膚科、外科、どちらのナース時代も勿論責任感を持って仕事に臨んで来ましたが、アートメイクはその中でも最も責任感が重くのしかかると感じています。
何故かと言うと、アートメイクはタトゥーとは違いますがお顔に傷をつけてそこにカラー剤を入れ、そのカラーが一生残ってしまう可能性がある治療です。それを思えばもし失敗したら、その方に一生の傷を負わせてしまったということにもなりかねません。

もちろんレーザーで除去したり皮膚を切開することで取り除くことはできますが、それをするにもリスクが伴います。
その重大な責任を感じて、毎日何件も仕事をすることになります。

②集中力が高まる

一例として眉のアートメイクで、一人のお客様に対して、早いアーティストで1〜1.5時間、ゆっくりなアーティストで1.5〜2時間を施術に費やします。
勿論その間はほとんどお部屋を出る事はありませんし、デザインから施術まで一切気を抜くことができません。
普段割と集中力がもたない私ですが、アートメイクの施術の時間だけは集中力が途切れず一日中仕事に専念しています。

③お客様と大きな幸福感をシェアできる

外科だと基本的にはオペをしてくれた先生に対する感謝。皮膚科ではナースに対する感謝もとても多いですが、全ては機械や薬剤の手を借りて出す結果。ナースの手だけでは結果を出すことは難しいでしょう。

その点アートメイクは、もちろん針やインクは使用しますが自分の手でお顔に直接絵を描いていくイメージですからその殆どはナースのスキルそのものです。
仕上がりを見てとても気に入って頂けた場合、お客様は感動して大変喜ばれます。その時、実は自分自身も上手くいった!すごく素敵なお顔になった!と感動していることが殆どです。上出来なアートメイクを見ながら、共に喜びをわかち合うことができます。
皮膚科の頃も同じように患者様と共に喜び合うことは有りましたが、両方経験した私が思うのは、アートメイクの方が責任が重い分だけ感動や喜びも大きいなと感じています。

プロフェッショナルな美容ナースとは

これがプロだ!というのは正直一概には言えないと思います。
私はたまたま、脱毛→美容皮膚科→美容外科→アートメイクと色々と渡り歩いてきて、様々な知識が身に付きました。

それぞれ数年単位で勤務もしており、そこそこの経験もあります。
広く知識が有れば、様々なお客様のお悩みに対してアドバイスする事が出来るし、あれこれ組み合わせてのご提案もする事もできます。
例えば、お顔のくすみ感の改善法を一つとっても、『ここの産毛が無くなったらもっとお顔のトーンが上がりますよ。それと同時に光治療をすると更にトーンアップが可能です。そして、たるみがあるとお肌にハリツヤがなくなってトーンが暗く見えやすいので、糸リフトで少しリフトアップなさると、なお良いかと思います。ホームケアではドクターズコスメでビタミンCやトラネキサム酸が配合された物がお勧めです』といったような感じです。
浅く広くであっても構いませんから、美容の分野の知識は多く持っていた方がよりプロに近付けるのではないかと考えます。

しかし、私が今まで見てきたナースさんの中で何名ものプロを見てきました。それは美容外科であればドクターのオペを介助するプロ。美容皮膚科であればレーザー機器のプロ。いろんな分野を知っているのも確かにプロだと思いますが、1つの事柄を長く続けて学び、その道のプロとして台頭することもできると思います。
それらのプロに私の知識は到底及ぶものではなかったですし、どの分野でどんなふうにプロになるかは選択肢が色々とあると思います。

私のナース人生を振り返ると結構色んなことを経験してきたんだなと。そして、そのおかげで様々な知識が身についたなと。改めて、自分の興味に従って動いてきた美容ナース人生が波瀾万丈だったと懐かしい気持ちになりましたし、それで良かったなと私自身は感じております。

あなたはどんなナースになりたいですか?どんな経歴をもった、何の分野のナースになりたいですか?
少し破天荒な私の経験が、どなかたの参考になれたら嬉しいです。

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Mei
看護師国試合格後アパレル会社へ就職。その後、臨床経験0のままで美容業界へ。美容ナース歴13年。現在はフリーのアートメイクナースや講師として活動中。