美容ナース管理職の仕事内容や給与のリアル。管理職を目指すナースへ

今回は美容業界で働くナースの管理職、つまり主任や師長と呼ばれる方々が一体どのような仕事をしているのかについて解説していきます。

まずは簡単に筆者の自己紹介をしていきます。筆者は新卒で都内の大学病院に入職し、そこで数年の臨床経験を重ねました。その後学生時代からの目標であった美容看護師になるべく大手美容クリニックに転職し、そこで美容外科、美容皮膚科の知識やスキルを身に付けました。現在は小規模クリニックにて管理職につきながら、脱毛専門クリニックでパート勤務もしています。

現時点でまだ美容業界で働いていない看護師さんも、すでに美容業界で働いている看護師さんも、この先美容看護師としてどのようなキャリアアップの道があるのかが明確になるように今回解説を進めていきたいと思います。

そもそも管理職を目指すべきなのか

解説を初めていく前に、そもそも管理職を目指すべきなのかという点について考えておきましょう。この文章を読んでいる方の中には「私は美容看護師としてのスキルがあれば十分だから、管理職につかなくてもいい」という考えの方ももちろんいらっしゃると思います。

たしかに管理職というとプライベートな時間が減ってしまう、責任とストレスが重くのしかかる、好きな現場の仕事が減ってしまうなどネガティブなイメージの部分が多いかもしれませんね。

ですがそれ以上にポジティブな面もあります。

美容看護師というのは看護師の働く職場の中でも20、30代がメインとなる年齢層が若い業界といわれています。求人の採用基準に長期キャリア形成のため35歳以下を募集と掲載しているクリニックもあるほどです。

ずっと同じクリニックで頑張り続けるというのであれば話は変わりますが、自分の年収UPやスキルUP、自分が興味のある分野の追求などをを考えているのであれば積極的に転職を考えることをおすすめします。そしていざ転職するとなったときには自分の年齢と今までの実績が採用担当者によって天秤にかけられるのです。

20代前半の場合はまだまだ勤務できる期間も長く、今後の成長を期待して採用してもらいやすいのですが、年齢を重ねていくとより即戦力としての価値を求められます。例えば転職を考える2人の美容看護師がいたとします。一人は美容看護師歴8年で管理職経験なし、もう一人は美容看護師歴5年で管理職経験ありです。どちらが採用されやすいように感じるでしょうか。お分かりかもしれませんが答えは後者の方です。長い期間美容業界で働いているのも非常に大きなアピールポイントとなります。

ですが後者の場合は「管理職経験があるなら美容看護師のスキル以外にマネジメントスキルも持っていて、売上意識を持った働きをしてくれるはずだ。短い期間で管理職まで上がっているということは行動力も伴っている人なんだな。」とより高い評価を得られるようになります。このように管理職としての経験は自分が働きたいと思ったクリニックで働ける可能性を高める要因の一つとなってくれるのです。

美容業界は年齢層が若い業界だからこそ比較的年功序列制にもなりにくく、頑張った人が管理職になりやすい業界とも言い換えることができます。私を含め、周りの美容看護師は「美容業界が楽しすぎて、ずっとこの業界で働きたい」という考えを持っている人が多いです。長期にわたる自分の美容看護師としてのキャリア形成を考えたときに管理職を目指すことを是非、視野に入れながら働いていただきたいと思います。

一般病棟の管理職との違い

一般病棟の管理職との違いについて解説します。

結論からいうと双方で決定的に違うのは売上意識の強さといえるでしょう。美容クリニックの管理職ナースは売上を上げるためにはどうすればいいのかを常に考え、行動していく必要があります。

美容クリニックは自由診療のため保険診療の一般病棟と比べると新人の頃から自然と売上を意識するようになります。「今月の売上目標はいくらか」「今日の売上はいくらだったのかか」「売上達成のためにあと手術が何件必要か」などという会話がクリニック内で日常的に行われているからです。一般病棟ではこのような会話はあまり聞き慣れないかと思いますし、自分の勤めている病院が一体いくら売り上げているのかを詳細に把握している看護師はたとえ管理職だとしてもごく少数でしょう。

一般病棟の管理職ナースは心身に不安を抱えた患者さんが相手となるので来院、入院する患者さんの安全を第一に人員配置をしたり、入院計画を確認しながら病棟をコーディネートすることを求められます。それに対し美容クリニックの管理職ナースは他部門のスタッフと一緒にクリニックの売上を伸ばすための戦略を練ることが多いです。看護師の目線から患者満足度を上げるための接遇を考えたり、キャンペーン内容を考えたりして、それを実行するために看護師の教育にあたります。

スタッフをまとめ上げるという点では共通の管理職の仕事ですが、安全管理に重きを置く一般病棟と売上アップに重きを置く美容クリニックでは管理職の意識もこのような違いがあるのです。

管理職につくためのステップ

それではここからは管理職につくためのステップについて解説していきます。管理職につくまでには①新人・中堅②指導者③リーダーの段階を経ていくことが多いです。

新人として入職してから管理職につくまでに各段階で仕事のときに意識して欲しいことをご紹介していきたいと思います。また各ポジションについているときにもらえる給料に差はあるのかも見ていきましょう。

人・中堅スタッフのときに意識するべきこと

新人・中堅スタッフのときに意識するべきことをお伝えしていきます。クリニックによりますが、新人は入職してから3ヶ月程度、中堅は指導者になるまでの1年程度の期間が目安となります。

まずは当然のことですがスキル習得に全力を注いでください。一般病棟で看護師として働いていたときと全く異なる内容を一から覚えていくため、最初は本当に大変だと思います。私の経験になりますが、管理職となった今よりも新人のときの覚えるべきことに次から次へと追われている時期の方が遥かに大変だったように感じます。

ここで1つアドバイスをするならば、機械の使い方や手術介助の手順だけを覚えるのではなく理論まで勉強することをおすすめします。美容皮膚科のシミ治療を例に挙げて解説します。

美容皮膚科で働くのであれば機械の操作方法がわかって、指定された時間内に施術がこなせるようになればひとまず仕事としては成り立ちます。しかしそこで満足するのではなく、どのようなプロセスでシミはできるのか、使用する機械はどうしてシミを薄くするできるのか、機械で値の設定があるのならばその値は何を示しているのか、などまで深堀りしていくのです。

しっかり学ぶ時間を作ってもらえるのは新人・中堅の特権ですし、わからないのが当たり前のこの時期だからこそ先輩に質問しやすいと思います。

機械を使えるようになっただけのナースと、知識までしっかり兼ね揃えているナースとを比べたときにどちらの方が患者さんや一緒に働くスタッフに信頼してもらえるかは歴然ですよね。

苦しい時期かとは思いますが、地道に美容看護師としての基礎力を上げていきましょう。

指導者になったときに意識するべきこと

次に指導者になったときに意識するべきことについてご紹介していきます。

美容クリニックでは1人の新人スタッフに対して1人の指導者がつくことが多く、新人スタッフが入職するごとに既に必要なスキルを習得した中堅スタッフの中で指導担当を割り振られるのが一般的です。

新人・中堅時代のつらい勉強期間を経て、ある程度現場に慣れてくると今度は新人指導に携わる機会が訪れます。指導してみるとわかるのですが、どんなに勉強していたつもりでも新人からの質問に答えられない場面が必ずあります。

指導者としては恥ずかしいかもしれませんが、他人に何かを教える場合、教える内容の3倍以上の知識が必要とよく言われます。ですから初めは分からないことがあるのは当然のことですし、自分に不足していた知識に気付くことができる点は自分にとってプラスでしかありません。

指導をする過程で自分に不足していた知識を補い、さらに持っている知識をブラッシュアップしていきましょう。

また他のスタッフの指導方法を観察することもおすすめします。自分では気がつかなかった言い回し、効率の良い施術の進め方など学べることがたくさんあります。ここでも知識やスキルをインプットし、後輩指導の際にアウトプットしていくことで自分の美容看護師としてのスキルの向上を図っていきましょう。

リーダーになったときに意識するべきこと

続けてリーダーになったときに意識するべきことについてご紹介していきます。

リーダーはその日1日の現場を回すコーディネーターの役割をするポジションで、全体の流れを把握し、患者さんの待ち時間をできる限り削減できるよう人員の配置を決定していきます。リーダーについては日替わりで担当するスタッフが決まっているクリニックがほとんどです。

リーダー経験が浅いうちは自分より上の先輩に対して指示を出すこともあるのでかなり緊張しますが、依頼したい仕事内容は何なのか、どんな理由でこの人員配置を考えたのかなどを自分の中で明確にして指示を出していきましょう。

役職が上になるほど自分自身で仕事をするだけではなく、他人に仕事を振る機会が増えていきます。気を遣って指示出しができないと自分はパンクしてしまいますし、自分ができる作業量はそもそも限られているため全体の仕事効率も下がります。他人に仕事を任せることは自分の怠けではなく、仕事全体の生産性を上げるために非常に重要なのです。

管理職になれば部下への指示出しがより多くなります。リーダーを務めている段階から「自分はどこまで関与して、何を周りのスタッフに任せるべきなのか」の判断の練習をしていきましょう。

各ポジションごとの給料の違いはあるのか

昇給があった場合を除き、基本給は基本的に新人でも管理職でも大きな差はありません。ですが、管理職につくと月に数万円ほど役職手当がつくのが一般的でしょう。

それでは管理職以外はどのポジションでも給料が一緒なのかというとそれも違います。美容クリニックでは基本給とは別に月の売上が達成したときに売上達成金が支給されますが、その金額がポジションごとに異なります。

新人・中堅よりも指導者をできるスタッフが高く、指導者よりもリーダーができるスタッフが高く、リーダーよりも管理職が高くなる傾向があります。これはポジションが上がるほど売上に対する貢献度が高くなるからです。

最初は数千円程度だった達成金が、ポジションが上がると多いところでは10万円以上達成金がもらえるようになります。キャリア(ポジション)アップをすることで同じクリニックにいながらもどんどん年収アップをすることも可能だということも覚えておきましょう。

管理職の業務内容を紹介

では管理職ナースはどんな仕事をしているのか業務内容をご紹介していきます。

管理職が何をするかはクリニックによって異なる部分ではあるかと思いますが、ここからは実際に私がクリニックでしている業務内容をもとにご紹介していきます。

大まかに仕事内容を分類すると対スタッフ、対患者さん、対クリニックの3つに関する仕事を行っています。

スタッフに関する仕事内容

一つ目はスタッフに関する仕事です。すでに一緒に働いているスタッフのシフト管理や勤務時間の管理をしたり、ときにはスタッフの面談をしたりします。どんなに美容クリニックでの仕事が好きな人でも労働環境が整っていなければ前向きに仕事をしていくことはできません。

仕事の負担がかかりすぎているスタッフはいないか、みんなが口を揃えて話す不満点はないかなどを確認し、もし改善点が見えてくるようであればスタッフ全体で改善案を話し合い、できる限り働きやすい環境づくりをしていきます。

また採用の仕事に携わることも多いです。クリニックにとって必要な人材を採用するため、どんな点に着目して面接をするか、どんな質問をして求職者の魅力を確認するかなどを院長などと相談しながら採用業務にあたります。

これらがスタッフに関する仕事内容となります。

患者さんに関する仕事内容

次に対患者さんに関する仕事です。売上を上げていくためには患者満足度の向上は必須です。施術内容を全て把握している看護師だからこそ、それぞれの所要時間を受付のスタッフと共有し、できるだけ多くの患者さんが予約を取れて、できるだけ待ち時間を少なくした予約の取り方を考えていきます。

そしてどんなに気をつけていたつもりでも患者さんがサービス内容に対して何らかの不満を感じクレームになってしまうことはあります。患者さんからいただくクレームはクリニックの向上にも必要なご意見なので、しっかりと謝罪は行った上で、どうすれば再発防止ができるかなどをスタッフと考えていきます。

これらが患者さんに関する仕事内容となります。

クリニックに関する仕事内容

続けてクリニックに関する仕事です。美容クリニックは売上UPをしていくために何をする必要があるかを常に考えています。そのため他部署の管理職と一緒にミーティングを行い、今月の売上を上げていくための施策を一緒に考えます。

ただ、ここで自分だけのアイディアだけで進めていくのではなく、他の看護師のスタッフにも「どうすればいいと思う?」と意見を出してもらい、みんなでクリニックの方向性を作っていくようにするとよいでしょう。するとより多くのスタッフが当事者意識を持って働きやすくなり、クリニックの運営もしやすくなるでしょう。

これがクリニックに関する仕事内容となります。

管理職ナースになって思うこと

私自身が新人や中堅の頃を思い出すと「ここの作業を省略できればもっと効率的に仕事を回せる気がするな」「こういう環境作りをしたらもっと患者さんの居心地がよくなる気がする」、そういうことを考えながら仕事をしていたように思います。もちろん全体の場で意見を出すのですが、裁量権は自分にはありませんので、組織が大きければ大きいほど自分の意見が反映されなかったり、反映までに時間がかかったりしました。

そして管理職となった今、新人の頃と比較すれば当然自分の裁量権が大きくなりました。クリニックの運営に直接的に携わることができるので以前よりスピード感をもってクリニックをいい方向に変化させることができるようになったと思います。

そこで感じることは良い仕事、影響力のある仕事をするにはある程度の権限や裁量が必要であり、その権限や裁量を持つために肩書き、つまり管理職に就くことが必要なのです。

ですから管理職に就くことが目的なのではなく、良い仕事をするための手段の一つが管理職に就くことだと日々感じています。

自分らしくキャリアアップしていこう

ここまで美容クリニックにおける管理職ナースの仕事についてご紹介してきました。

管理職として働くことが全てではなく、どんな形であれ美容看護師としてクリニックに貢献することはできます。

管理職として働くことは一つの手段として捉えながら、みなさんが美容看護師として自分らしいキャリアアップをしていければと思います。

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つーさん
岩手県出身。アラサー。学生時代は地元で過ごし、新卒で都内の大学病院に勤め看護師生活をスタート。美容ナース歴は5年目。