美容ナースが退職するタイミングとスムーズに退職する方法

今回は「美容ナースが現在勤めているクリニックをスムーズに退職する方法」について解説していきたいと思います。

本題に入る前に簡単に筆者の紹介をさせていただきます。

筆者は現在も現役で美容ナースとして働いています。最初は大手美容クリニックで美容ナースとして働き始め、パート勤務を含めいくつかの美容クリニックで働いてきた経験があります。

自分自身の退職・転職を経験したことに加え、同時にたくさんの美容ナースの退職・転職も見てきました。そこで分かったことは退職の仕方によっては、スムーズに辞められる人もいれば、気まずい雰囲気の中で辞めていく人もいるということです。この記事を読んでいるみなさんも「できるだけ円満に退職したい」と思っている方がほとんどかと思います。

今回は自身の経験をもとにどのような流れで進めていけばスムーズかつ、円満に退職できるかを解説していきますので、是非ご参考にしてみてください。

美容ナースが退職を決意するきっかけ

美容ナースが退職を決意するのは一体どんなことがきっかけとなることが多いのでしょうか。

もちろん人それぞれ退職理由は異なりますが、大きく分けると次の3つのことがきっかけとなっていることが多いです。

まず1つ目は自分のスキルや年収を今よりも高めたいと感じた時です。

美容クリニックは美容外科、美容皮膚科、脱毛専門クリニックに分類されることが多く、それぞれで求められるスキルや知識が異なります。また、例えば同じ美容外科のクリニックでも、二重整形を得意とするクリニック、脂肪吸引を得意とするクリニック、リフトアップを得意とするクリニックなどクリニックごとに力を入れている分野が異なっています。

長期間に渡り同じクリニックに勤めていると、そのクリニックで求められているスキルはしっかりと身につくものの、他の領域に関しては全く分からないということはよくあることです。

今持っているスキル以外も幅広く身に付けたいと思った場合には思い切って転職をして異なる強みを持つクリニックで働く必要が出てくるでしょう。

また、美容ナースとして同等のスキルを持っていたとしてもクリニックによって給与水準は異なります。同じクリニックにいながら自分の年収を一気に上げるというのは難しいことです。年収を今よりも高めたいと考えたときに、自分のスキルをさらに高く評価してくれるクリニックへの転職をみなさん意識し始めるようです。

続けて2つ目はクリニックの求めるスタッフ像と自分が望む働き方にギャップを感じた時です。

例えば自分自身は患者さんとしっかりコミュニケーションを取りながらゆったりと働きたいと感じているのにもかかわらず、勤めているクリニックでは来院患者数が多く、仕事内容も職種ごとにきっちりと分けられているため、患者さんへの対応が流れ作業のようになってしまっている、というケースなどがあるでしょう。

また、売上を意識していく中で、患者さんに対し商品や施術の営業をクリニック側から求められた場合に、自分は患者さんに対してあまり営業をかけたくないな、こういう接客はしたくないなと感じる方もいらっしゃるでしょう。

このように実際の仕事と自分の理想との間にギャップがあると感じた時に退職を考える人は多いです。

そして3つ目は職場の人間関係に疲れた時です。

どんなに職場の仕事内容に満足していたとしても、一緒に働くスタッフ同士の関係性が良いものでないと長くそのクリニックで働くことは難しいでしょう。場合によって人間関係のストレスが原因で体調を崩してしまうこともあり得ます。

人間ですから相性が合う合わないがあるのは当然のことです。その中で自分が相手の考え方の理解に努め、歩み寄ろうとする意識を持つことは大切ではあります。しかし、それでも関係性が改善せず、今の職場に居心地の悪さを感じたときにはそのクリニックを退職することを考えるきっかけとなるでしょう。

以上のような理由で美容ナースは退職を考える人が多いようです。

退職するのにベストなタイミング・悪いタイミングはあるの?

それでは退職するのにベストなタイミング、反対に悪いタイミングというのはあるのでしょうか。結論から言うとベストなタイミング、悪いタイミングは存在します。退職のベスト・ワーストタイミングはいつなのかこれから見ていきましょう。

退職するのにベストなタイミングは3条件が満たされているとき

退職するのにベストなタイミングは次の3条件が満たされているときです。

1つ目は現在勤めているクリニックの施術内容のスキル、知識がすでに身についているということ。2つ目は新人教育を担当した経験があること。そして3つ目は自分の抱えている仕事を任せらるスタッフがいるかどうかということです。

まずは1つ目の条件である、現在勤めているクリニックの施術内容のスキル、知識がすでに身についているということについてみていきましょう。こちらに関しては退職後の自分の転職を有利にするために必要な条件となります。

美容クリニックから保険診療の一般病院・クリニックに転職を考えているという方は例外になりますが、今後も美容クリニックへの転職を考えているという方にとっては非常に大切な条件です。

採用するクリニック側もできる限り即戦力となる人材を求めています。

そのためクリニック側が採用を検討する際には今まで勤めていたクリニックではどのような治療を行っていたのか、何が強みのクリニックだったのか、どんな機械を扱っていたのかなどを必ず確認しています。

美容クリニックでは接遇にも重きを置いているため、その方が持っている雰囲気、笑顔、話し方なども重要ではありますが、やはりスキルが十分に身についていない時点で転職するとなると少しハードルは高くなります。そして転職したいクリニックが小規模であればあるほどその傾向は顕著です。

それに対し、例え勤続年数が1年未満だったとしてもスキルがきちんと身についていれば自分のアピールポイントとして評価してもらえる可能性が高まるので、現在勤めているクリニックでの施術内容に関してのスキルや知識はしっかりと習得しておくようにしておきましょう。

2つ目の条件として挙げた新人指導の経験があればよりよいでしょう。

人に物事を教える時には相手の3倍の知識量が必要になるとよく言われる通り、他人に指導をするということは十分な知識量を持っていないとできないことです。

そして基本的な知識だけではなく、トラブルがあった場合の対処法や、患者さんの症状、悩みに合わせた最適なアドバイスが行えるなど、状況に応じた美容ナースとしての考え方も指導していく必要があります。これらは指導する自分自身が現場においてある程度の症例数を経験していないとできないことです。

採用するクリニック側も相手が新人指導を経験していると分かれば、「今まで勤めていたクリニックで十分なスキルを身に付けていて、職場からも信頼されて仕事を任せられていたのだろう」と判断できます。

このように新人指導を行った経験というのは大きなアピールポイントになるので、指導するチャンスがあった場合には積極的にチャレンジしてみることをおすすめします。

そしてクリニックをスムーズに退職するため重要なポイントとして3つ目に挙げた、自分の抱えている仕事を任せらるスタッフがいるかどうかについてです。

入職してから研修期間を終えるとほとんどのクリニックでは物品発注や機械のメンテナンス、業者とのやりとりなどクリニック運営に必要な雑務をスタッフごとに振り分けられるかと思います。

そのため自分が退職をするとなると自分が抱えていた業務は当然他のスタッフに引継ぐことになります。

そして引き継ぐ相手となるのが誰になるのかが大きなポイントになります。

責任者や先輩スタッフはすでに抱えている仕事量が多いことが多く、さらに仕事を引き継ぐことになると単純に負担が増えてしまいます。

後輩であればどれだけ仕事を振ってもいいというわけではありませんが、ある一定のスタッフへの負担が大きくなってしまうのは問題です。

退職する心が固まっていても、退職するその日まではそのクリニックの一員です。現職場に負担をかけすぎないよう仕事の引継ぎについても十分な配慮ができるようにしておきましょう。

以上の3条件が満たされたときが退職するのにベストなタイミングといえるのです。

3条件が満たされていないと退職するには悪いタイミングになってしまう

反対に先述した3条件が満たされていない場合には退職の悪いタイミングとなってしまうことが多いです。

スキルが身についていない状態での退職は次の転職時に自分のアピールポイントに欠け、転職したいクリニックからの評価が上がりづらくなります。

また自分が退職することで他のスタッフに過度に仕事の負担がかかってしまうようであれば退職での雰囲気が悪くなってしまうことが懸念されます。

そのためできる限り3つの条件はクリアしたタイミングで退職を検討するのがベターです。

そしてさらにこれらに加え、繁忙期直前に退職する、ということも避けた方がいいでしょう。

美容業界ではまとまった休みがある時期に特に患者さんが集中しやすいため、ゴールデンウィークやお盆休み、年末年始の休みの期間が繁忙期にあたります。繁忙期になると1日の売上が通常時の2〜3倍、来院患者数も2倍になるということは珍しくありません。

そのため繁忙期直前の退職は残ったスタッフにかなりの負担がかかってしまいます。スムーズな退職を望むのであれば繁忙期の時期はずらしての退職をおすすめします。

退職はいつ、誰に、どんな順番で伝えるか

自分の中で退職の意思が固まったら今度は職場の人にその意思を伝えなければいけません。その際に退職する旨はいつ、誰に、どんな順番で伝えていくのがベストなのか、その流れについてみていきましょう。

法律的には「退職の意思表示を行った2週間後に退職できる」と定められています。しかしながら、クリニックの就業規則には「退職する場合には○ヶ月前に申し出ること」と記載されていることがほとんどです。つまり2週間よりももっと早く申し出る必要があります。スタッフの人員が比較的潤っていて、人事に関する部署も確立されている大手のクリニックなどは「1ヶ月前」までに申し出れば良しとされていることもあります。

それに対して人員にあまり余裕のない小規模クリニックなどは採用や新たに入職するスタッフの研修期間等を考慮して「3ヶ月前」までには申し出るようにと決められている場合もあります。

このようにクリニックによる差がありますが、自分がスムーズに退職するためには必ず勤めているクリニックの規則に従うようにしましょう。

そして次に退職意思を伝える順番についてです。

まずは自分の直属の上司にあたるナースの責任者(主任ナース、師長)に伝えましょう。まずは仲が良くて話しやすい同期や少し上の先輩に話したいという方もいらっしゃいますが、先に同僚に退職の話をした結果、自分の知らないうちに職場内に退職の話が広まっていたというのはよくある話です。

スムーズに退職するためにもまずはナースの責任者に伝えるようにしましょう。その後責任者と話し具体的な退職日が決定したら自分の口から他のスタッフにも伝えるようにするといいでしょう。

スムーズに退職するための交渉の進め方

ここからはスムーズに退職するための交渉の進め方について説明していきます。

結論からお伝えすると交渉を進めていく上で重要なのは「自分の意思を持ちつつ、職場への気遣いを忘れない」ということです。

人員の余裕がないクリニックでよくあることとして、上司に退職の意思を伝えたにもかかわらず「うちのクリニックにはあなたの力が必要だから辞めないで欲しい」と言われ、辞めにくくなってしまったというケースがあります。

周りから頼りにしてもらえることは嬉しいことであり、光栄なことです。ですがこんな時には再度「本当に自分は辞めなくていいのか?」と問いかけてみましょう。

自分はどうしてこのクリニックを辞めたいと思ったのか、辞めなくても自分の希望は叶えられるのか、自分が退職を思いとどまることでクリニックでの処遇は圧倒的によくなるのか。

それらを踏まえてクリニックに残ることが最善の選択と考えるのであれば退職の意思を撤回すれば良いでしょう。しかし単純に「自分が辞めるとクリニックに迷惑をかけてしまうから退職を諦めよう」という考えを持つのはやめた方がいいです。

退職をして次の道に進んだ方がメリットが大きいと思うならば、しっかりと退職の意思を伝えましょう。

ただし、退職の意思を強く持つのはいいことなのですが、あまりに一方的に自分の意思だけ伝えてしまうとクリニック側もいい印象を持ちません。

退職するまでの時間で、自分はどのようにスタッフに対して仕事を引き継いで行くのか、どこまでは自分が責任を持って業務を行うのか、行動計画も一緒に添えて伝えておくといいです。

そうすることでクリニック側も「私たちのこともしっかり考えてくれた上での退職なんだな」と感じやすくなり、結果として円満でスムーズな退職へと繋げることができるでしょう。

スムーズな退職で気持ちよく新しいスタートを切ろう

ここまで美容ナースがスムーズに退職する方法について解説してきました。

仕事を辞めるいうとマイナスイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。ですが、退職は自分のキャリア形成にとって新たなスタート地点でもあります。

そしてスムーズに退職することはより前向きに新しいスタートを切ることにも繋がります。

退職して新しいキャリアを積み重ねることを現在検討している方は今回の記事を一つの参考にし、自分の意思の明確化とクリニックへの気遣いを忘れずに次の一歩をどう踏み出すか考えていただければと思います。

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つーさん
岩手県出身。アラサー。学生時代は地元で過ごし、新卒で都内の大学病院に勤め看護師生活をスタート。美容ナース歴は5年目。