アートメイクナースになるには。働き方ごとのメリット・デメリットも解説!

美容ナース歴13年、その後フリーのアートメイクナースになった経験から、アートメイクのお仕事を始める前にやっておけば良かったことや、クリニックに勤めたり、フリーになるなど、どの様な働き方でアートメイクの施術に携わるか、そのメリットデメリットを考察していきます。

アートメイクナースになるための準備

私自身何か準備をしてこの業界に入ったかと言えば、全く何も準備していませんでした。また、何もしなかったことで特に不便を感じたことも有りません。ただ、これは私の場合なので、現在、フリーのアートメイクナースとして働いている私が、客観的に準備しておいたほうが良いと思えることをピックアップし、解説します。

①皮膚構造と働きについての学習

アートメイクはよく刺青(タトゥー)と比較されますが、似て非なるものです。

違いはインクを入れていく層の違いなのですが、それを理解するためにはまず皮膚の構造やその働きについて知っておく必要があります。

看護学生時代の教科書を読むも良し、ネットで調べてみると案外教科書よりも美容的観点から役に立つ記載があるかもしれません。

②美容皮膚科のメニューについての学習

全く関係ないように思えますが、実はアートメイクを受けにくるお客さんの半分以上は美容皮膚科に定期的に通院し、何かしかのトリートメントやお注射を受けている印象です。

実際に施術をする際には、それらを受けることによりアートメイクへどんな影響があるのかをご説明する必要があります。

ですから先ずは治療内容だけでも事前に知っておくと、それらの関連性について想像しやすくなるでしょう。

③SNSでの情報収集

近年はアートメイクに関する情報というのは、主にSNSで得やすい印象があります。

海外のアーティストの作品が見たいとなっても、そのサイトを検索で見つける事は難しいです。

彼らが発信しているSNSのアカウントを見れば、作品は勿論のこと自主練習や施術中のムービー、またはオンライン講習の情報などもそこから得られます。

自己流でも構いませんから、見様見真似で毛流れを描いたりすることも良いかもしれません。

④実際に講習を受けにいく

アートメイクナースになるための最大の準備として、講習を受けにいく、ということが挙げられると思います。

それなのに何故これを一番最後に書いたのか私なりに考えると、きちんとした理由があります。

まず講習を受けるためには数十万円という高額な費用が必要になります。全員が全員、その金額を用意出来るかと言えばそんなことはないと思います。

また、せっかく高い費用を払って講習を受けたけれど、それっきりで終わってしまうといった方もいらっしゃいます。

現在はこの業界でもアーティストやクリニックがどんどん増えて来ており、経営者側も即戦力(経験者)を求めるようになってきた様子です。

上記のような講習を受けただけでは即戦力になるとは言い難いでしょう。

経験者枠での採用をしてもらえないとなった場合、講習の受け損になる可能性も大いにあるということです。

美容外科・皮膚科でのナース業務は役に立つ?

アートメイクになるために、美容外科や美容皮膚科での勤務経験は実際役に立つのでしょうか? 美容結論から言えば、とても役に立ちます。

理由は外科と皮膚科に分けてご説明します。

①美容皮膚科

前節でも述べているようにアートメイクと美容皮膚科はお客さんの層が似ているため、美容皮膚科勤務時代に学んだ知識は毎日フル稼働しています。

アートメイクのデザインをする際にその方にどういった美容施術を勧めれば、より左右均等に、より美しいデザインになるか、という事をアドバイスできるからです。例えばよくあるパターンだと、額のボトックス注射、ヒアルロン酸注入、後に述べる美容外科でのオペなどです。手軽なものから根本治療までを幅広くアドバイスします。

また、肌やエイジングケアについてのお悩み相談を受けることもできます。このシミには何が効くのか、ハイフは実際のところどうなのか、など多岐にわたります。

あとは、その方の受けている美容皮膚科での施術内容がアートメイクにどんな影響を及ぼすのかを伝えることもできます。

例えば眉毛のアートメイクを受けた方が脱毛やシミのレーザーをそこに当てられてしまった場合、軽い火傷になってしまう可能性があります。

美容皮膚科で勤務していたらその関連性は誰に教えてもらわずとも、容易に想像ができるようになります。

②美容外科

アートメイクに来るお客様の中には、眼瞼下垂の症状のある方がいらっしゃいます。

その場合大体の方は眉が大きく上に上がっていたり、眉毛の筋肉を使い過ぎていることにより左右がバラバラになっていたりします。

ここにボトックス注射をしてしまうと、元々下垂している瞼をなおさら下垂させてしまうこともあります。

その場合は、目元のオペについてご説明したり、もしくはまた違ったアプローチとしてこめかみ辺りのリフトアップのオペなども選択肢として有ります。

このように、注射のみでは改善されないような症状の方には外科的治療をお勧めする必要が出てくるため、美容外科ナースで学んだ知識は相当役に立つでしょう。

一番初めに誰に教わるのか、は重要。アートメイクナースになるための勉強、学校

私自身は入職前に勉強などは特にしませんでした。

というのもまだ情報の少ない時代で、ネットで検索しようにもなかなか欲しい情報に辿り着けない状態だったからです。

現在では、多くの選択肢があります。

アートメイクのスクールが幾つか設立されており、その情報も直ぐに得られます。

ネットで【アートメイク 講習】と調べると、情報が出てきます。それらがアートメイクの学校です。

アートメイクには流派の様なものがあり、それぞれ少しずつ異なったメソッドを教えているようです。

先ずは講習に申し込む前に、そのスクール出身者の作品を見たり、もしそのスクールと提携しているクリニックが有ればクリニックのサイト、クリニックに所属しているアーティストのSNSアカウント、などを調べてみましょう。

その中で、自分自身が好きだ!と直感的に感じた所へ習いに行きましょう。

一番初めに誰に教わるのか、は本当に重要な事です。しっかり下調べしてからスクーリングするようにして下さい。

アートメイクナースの働き方について

アートメイクナースの働き方は具体的にどのような形をとるのでしょうか。

私はアートメイクナースになってからは一度クリニックに属しており、その後フリーランスとして活動するといった流れで現在に至ります。

どの働き方にもメリットデメリットがあり、私が考える働き方それぞれについてお話しします。

クリニックの業務の一環でアートメイク施術をする

メリット

①色々な施術ができて楽しい

アートメイクだけでなく、毎日色々な施術ができて飽きずに楽しくお仕事ができます。本当にこの一言に尽きると思います。実は私もこの様な働き方ができたら良いなと、今でも思ったりします。

飽き性の方は一日中アートメイクをすることは間違いなく飽きます。すると集中力も欠けてしまうので作品に悪影響がある場合も考えられます。

②知識が増える

アートメイクと美容皮膚科や美容外科の業務を同時進行するとどちらも最新の施術を学ぶことができ、どちらの知識もどんどん増やしていくことができるでしょう。常に美容の最先端の情報を得られるという面では、今後の仕事の仕方の幅も広がりますし、話題の美容施術を網羅できるというなんとも羨ましい状況になります。

③お客様にアートメイクをご紹介できる

一般的な美容治療を受ける方で、未だにアートメイクは刺青だと思っている人や怖いものと思っている人も多くいますし、そもそもアートメイクが何なのかきちんと理解していない方が沢山いらっしゃるのが現状です。

その方たちは潜在的なお客様であり、例えばインセンティブ制度を導入しているクリニックであればそのお客様にアートメイクを受けて頂くことでお給料がアップするかもしれません。

また、例えば自分指名のお客様であれば、そもそも信頼関係ができ上がっている中でアートメイクの施術を行うことでクレームに繋がりにくくなるでしょうし、とても喜んで頂けること間違いなしです。

④集客をしてもらえる

勤めている頃は考えた事もなく、当たり前の事と思っていましたが、クリニックが広告費をかけて集客してくれます。集客で悩んだり、お客様を呼び込むために自分自身で投資する必要は一切ありません。

デメリット

①手が鈍る

アートメイクは数日施術をしないと手が鈍ってしまいます。私は今でも毎晩もしくは毎朝人工皮膚に練習をしてから施術に臨みます。

一般的な美容クリニックに籍を置いている場合、毎日アートメイクの施術をできるかというとそういうわけでもないと思います。

自分の毛並みの描き方を忘れてしまったり、針を入れる深さの感覚を忘れてしまったりする可能性があります。

②どちらも中途半端になる可能性

日中の仕事も忙しいのが美容クリニックの常です。それなのに、美容皮膚科、美容外科の勉強と、アートメイクの勉強を平行して行えるかと言えばそれは現実的に難しいでしょう。年数を重ねていくことで徐々に双方の知識は付いていくと思いますが、初めのうちはどちらも中途半端な知識量、技術力になりやすいかもしれません。

アートメイク専門のクリニックに勤務

メリット

①専門性が高まる

毎日がアートメイクの施術になり、日々お客様の施術ができることは知識や経験がどんどんどん増えていき、この肌質であればこのような反応、定着になるといった傾向と対策を学ぶことが最短ルートでできます。

②無駄な隙間時間が少ない

先に伝えておきたいのですが、以下は感じ方が人それぞれかと思います。

基本的に1件が2時間前後かかり、その間部屋を出ることはほぼ有りません。終わったらカルテを書いてすぐ次のお客様の施術へ向かいます。といったように施術がパンパンに詰められているので、ほとんどがお客様と過ごす時間になりますから、スタッフと話す時間が多くは取れません。私はスタッフ同士の談話に積極的に入りたいと思わない性格だったので、それが無くなったことでストレスは軽減しました。

③困った時に助けてくれる仲間がいる

とは言え、一緒に技術習得を目指している仲間ですから、困った時に助けを求めると色々とアドバイスをもらうことができます。勿論自分自身の失敗や経験を話すこともあります。全員が様々な経験を持っており、それらをシェアすることでお互いに支え合い、ブラッシュアップすることができます。

④集客をする必要がない

前の章と同様、基本的にはクリニックがお客様を集めてきて、そのお客様を自分達に割り振ってくれます。予約が入らなかったらどうしよう…という不安に苛まれることは殆ど有りません。

デメリット

①身体的苦痛

毎日アートメイクの施術をすることで、段々と身体が辛くなってくるかもしれません。というのは、施術中は長時間前傾態勢です。空き時間や自宅でも机に向かって人工皮膚の練習をします。かなり早い段階から肩や首のこり、目の疲れ、腰の痛み等々の体の不調を感じるでしょう。体のメンテナンスは仕事に直結するため、マッサージや鍼治療は必須になるかと思います。

②精神的苦痛

日々何件もアートメイクを続けていれば、少なからずクレームも出てくるのは仕方のないことです。皮膚科の治療で生涯残る程の酷い火傷を負わせることはなかなか起こり得ないですが、アートメイクは層を間違えれば刺青のようになり一生残るおかしなアートメイクになってしまうかもしれません。レーザー除去や皮膚切開で治療することは可能ですが、お客様の精神的苦痛や諸々の負担を想像すると、自分自身がかなり落ち込むこともあるでしょう。

フリーランス・独立

メリット

①お客様とアーティストが直通

クリニックに属していると、施術しに来て下さったお客様が指名でないこともあります。もしくは自分指名となっていても、クリニック側がお勧めして「ではその方で」となっている場合もあるようです。

特に自分の作品が好きだから指名したという訳ではなくクリニックのお勧めにより、名前すら知らず作品も見ずに指名で来られるお客様もいらっしゃいます。

フリーだと基本的には私の症例を見て、私に施術してもらいたい!と思ってくださった方が誰を介することもなく私の元へいらしてくださいます。

その時点で多少期待値は高まっていますが、他のアーティストさんの症例写真を持ってこられてそれを作って欲しいと言われるよりも、自分自身の毛並みやデザインを反映することができるのですごくやりやすいですし、イメージと違ったというようなクレームも自ずと減ってくると思います。

②タイムマネジメントができる

仕事を入れるも入れないも自分次第。休みたければ予約を入れなければいいし、仕事をしてひたすら経験を積みたいならば休日を作らずひと月まるまる仕事することもできます。私自身はそんなに多くの休みが欲しいと思わないので、基本的にはひと月の中で休みは決めずに予約を取っています。

クリニック勤務時のように労働時間の決まっている働き方をしている時よりも明らかに労働時間は増えましたが、精神的な負担はかなり軽くなりました。

③人間関係が簡潔

通常、クリニックに所属すると他のスタッフと協力をしなければいけません。すると相性というのがあるでしょうし、派閥のようなものができるかもしれません。看護師は女性社会なので、ある程度のストレスは人間関係で必ず出てくるのではないかと思います。

フリーだとどのスタッフさんとも深く関わることはできなくなりますが、こちらは部屋を貸して頂いている立場であると捉えているので、クリニックのスタッフさんには常にサポートして頂いているという認識です。すると自分の中で上下関係がハッキリしますから、いつでもどなたにも感謝するしかなく、誰かに期待することも不満を持つことも無くなります。結果的に、人間関係のストレスのようなものはかなり減りました。

デメリット

まずアートメイク専門のクリニックに所属した際のデメリット①②はフリーであっても同様です。

③困った時誰も助けてくれない

基本的に、施術をする場のスタッフさんはアートメイクの施術に関して関与することはほぼ有りません。クレームが起こった場合や、定着不良が続いている、逆に毎回刺青の様になって戻ってくる、等の困った時にそれを直ぐその場で聞くことはできません。

今回の施術でどのような対策を打てるのか、ということを誰にも相談できません。経験豊富であれば問題ありませんが、まだ経験が浅い場合には失敗に失敗を重ねてしまうこともあるかもしれません。

フリーというのは全てを一人で担う分、支えになってくれる人は居ないと思った方が良いでしょう。

④集客を自分でする必要がある

最後にもっとも大切なことを書きます。

集客=収入に直結します。シンプルに、自分自身に集客力が無ければ食べていくことができません。大金をつぎ込めば簡単にそれが叶うのかもしれませんが、たった一人で起業した私にそんな財力や知識や度胸が有るはずもなく、日々手さぐりで試行錯誤を繰り返し、地道な努力の積み重ねです。

集客のことを全く考えない日は、独立した日から一日たりともありません。朝起きた瞬間からインスタDMや公式LINEのチェックとお返事。通勤時間は他のアーティストさんのSNSから魅せ方のお勉強。日中施術がキャンセルになったらインスタライブ。帰ってインスタ投稿のストーリーや記事作成。予約のない時間、プライベートで旅行に行っている日、体調の悪い日、そんなことはお客様には一切関係のないことです。

フリーの場合、仕事とプライベートの境目はかなり曖昧です。それ故に上記の様に朝から晩まで集客のこと考えている、常に仕事をしている感覚、といった状況がいくらでも可能になってしまうのです。人気アーティストさんであればお客様の方が待っても予約したい!という状況になりますが、全員がそんな風になれるわけでもありません。明日明後日、一か月後、一年後の予約が入るかどうかも分からない中で、日々綱渡り感覚の人生です。

まとめ

アートメイクナースになる!とひとくちに言っても、様々な方法や働き方が有ります。

アートメイクナースのはじめ方に悩んでいる皆様へ、この記事があなたに合った方法を見つけられるキッカケになれたらとても嬉しいです。

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Mei
看護師国試合格後アパレル会社へ就職。その後、臨床経験0のままで美容業界へ。美容ナース歴13年。現在はフリーのアートメイクナースや講師として活動中。