美容クリニックでの接客・接遇術。接遇スキルを高めるためのポイントを解説

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今回は美容クリニックでの接遇について解説していきたいと思います。
保険診療の看護師として働いてから未経験で美容業界に転職した場合、多くの違いを感じることでしょう。
そしてその中でもギャップを感じるのが「患者さんへの対応の仕方」、つまり接遇面です。筆者も今まで何人もの後輩を指導していきていますが、未経験のスタッフが入ると「そうだよね、最初は戸惑うよね」と思いながら接遇の指導をしています(笑)。

そこで保険診療と美容クリニック(自由診療)では何が違うのか、どうやって接遇スキルを身につけていくかについて解説していきますので、美容クリニックで働く上で接遇面に関して不安、悩みのある方は是非参考にしてみてください。

自由診療と保険診療の違い

一般的なクリニックや病院で行われているのは保険診療にあたります。保険診療とは病気を治すことを目的としたものになります。そのため病気を治す、改善するといった明確なゴールに向かって治療を行っていきます。

それに対し、美容クリニックで提供しているのは自由診療と呼ばれるものです。こちらは病気を治すためではなく、患者さんが望む理想の自分に近づくことを目的としています。そのため明確なゴールがないことが多く、クリニック側が患者さんの理想を理解し、満足してもらえる治療法を提案していく必要があります。

保険診療は診察料や治療費が国である程度決められているため、患者さんはどのクリニックに行ってもそこまで大きな差はありません。例えば風邪を引いた時などは「とりあえず近所のクリニックに行って薬をもらおう」くらいの感覚でクリニックを選ぶと思います。

しかし自由診療は提供するサービス、価格などはクリニック側で決めています。そして患者さんもたくさんあるクリニックの中から「価格重視だからこのクリニックにしよう」「この機械があるところに行こう」「この先生に手術をしてもらいたい」等々、自分の価値観や希望にあったクリニックを選びます。そして実際に行ってみて納得しなければもう来院していただけることはありません。

患者さんから「ここでいい」ではなく「ここがいい」と思ってもらう必要があるため、美容クリニックでは「患者さん」ではなく、「お客様」として対応します。そのため呼び方も「患者様」「お客様」とお呼びすることが一般的です。こういった違いがあるからこそ、自由診療を行う美容クリニックはサービス、接遇に力を入れる必要があるのです。

接客する上で大切なポイント

それではここからは患者さんを接客していく上で大切なポイントをご紹介していきます。保険診療の看護師として働いているときと重なる部分もあれば美容クリニックならではの部分もあります。すでに美容看護師として働いている方は自分がどの程度できているかも合わせて確認してみてください。

①清潔感

まずは清潔感です。
目から入る印象はとても大きいということは皆さんすでにご存知かと思います。親切で丁寧な接客ができたとしても、清潔感がなければ一気にマイナスの印象を相手に与えてしまいます。

特に美容クリニックにいらっしゃる患者さんは「美しくなりたい」という想いを持って来院されているため、相手の美意識・見た目にも敏感な方が多いです。患者さんから「この人は全然見た目に気を遣えていない人だな」と思われてしまうと、患者さんの悩みに対してどんなに適切なアドバイスをできたとしても「この人が話してくれる美容のアドバイスはなんだか信用ができないな」と思われてしまう可能性があるのです。

これは容姿端麗でなければいけないというわけではありません。肌をきれいに保つ、髪型を整える、爪などの細かい部分のケアも忘れずに行う等相手を不快にさせない最低限の清潔感があればいいのです。まずは言葉を交わす前の段階から気をつけておきましょう。

②笑顔

続けて笑顔です。
清潔感と同様、こちらも見た目に関する重要なポイントになります。看護師の場合業務中はマスクをつけていることが多いかと思いますが、マスクで顔の半分が隠れていても相手に笑顔が伝わるようにするのが大切です。

以前美容クリニックに初めて来院したという患者さんを担当した時、「今日ここに来るまで、私みたいな人が行くのは場違いなのかも…とすっごく緊張していたんです。でもスタッフさんたちがみんな笑顔で、話しかけやすい雰囲気だったのでとても助かりました」と嬉しいお言葉をいただいたことがあります。

もしも自分が疲れていたり忙しかったりしても患者さんには関係ありません。来院されている全ての患者さんに気持ちよく過ごしていただくために常に笑顔でいることは意識しておきましょう。

③言葉遣い

続けて言葉遣いについてです。
丁寧な接客=丁寧な言葉遣いというイメージが強いのではないのでしょうか。保険診療のときは通院する患者さん、入院する患者さんと仲良く接することが多いので言葉遣いが友達や近しい人と話すようなフランクな感じで話すことが多いと思います。患者さんもそちらの方が気軽に過ごすことができるという方も多いので、むしろその方が接遇としては合っていると思います。

それに対し美容クリニックでは患者さん=お客さまとして対応することとなり、友達と話すような話し方は失礼にあたるので注意が必要です。

しかし、美容クリニックでもクリニックごとに年齢層が若めの患者さんがメインであったり、年齢層が高めの富裕層がメインであったりと客層が異なります。客層が異なると患者さんが居心地をよく感じる言葉遣いが少々変わってきます。富裕層メインであれば丁寧な言葉遣いの方が受けがいいですし、若年層がメインであれば丁寧すぎる言葉遣いは逆に居づらさを感じてしまうようです。

そのため自分の働くクリニックの客層に合わせた言葉遣いができると患者さんとの距離も縮めやすくなるかと思います。

④相手がたくさん話したい人か、静かに過ごしたい人か見極める

患者さんがクリニックでどう過ごしたいか、つまりたくさん話して楽しく過ごしたいのか、静かにゆったりと過ごしたいのかを見極めるのも接遇においてはとても大切なポイントです。

会話を楽しみにしている患者さんに対してあまり会話ができないと「今日は話を全然聞いてもらえなくてつまらなかったな」と思われることもありますし、反対に静かに過ごしたい患者さんに対して話しかけすぎてしまうと「落ち着いて過ごせなくて嫌だな」と感じられてしまうこともあります。

人それぞれ求めているサービスは異なるので、一人一人に合わせた対応ができるようになると満足度も上がり、また来たいと思ってもらえるでしょう。

⑤聞き上手になる

話し上手よりも聞き上手の方が接遇としては重要で、信頼される看護師になりやすいです。美容クリニックにいらっしゃる患者さんは何かしらの悩みを持ち、それを改善したいという思いで来院されます。

そしてその中には自分の悩みをあまり他人に相談することができず、一人で抱え込んでいることも少なくありません。患者さんが持つ悩みに対して適切な治療を提案できることももちろん重要なスキルなのですが、入職したばかりだと知識もまだ不十分で自信を持って提案することは難しいと思います。ですが、患者さんの気持ちに共感することはたとえ新人であってもできます。

目の前の患者さんは何で悩んでいるのか、治療するにあたってどんなところに不安を感じているのか、そういった部分を丁寧に汲み取っていきます。そうすると患者さん自身も悩みを打ち明けられる場ができることで安心感や信頼感を感じやすくなります。

もしこれが患者さんの話をそこまで深く聞かずに「この治療がいいと思いますよ」「もっと効果が高い治療に変えた方がいいですよ」と提案ばかりだと、営業されて不快だと感じる方もいることでしょう。

こちらの考えを伝えるだけではなく、まずは相手の話をしっかり聞き、悩みを引き出すということを意識して対応していくと自然と患者さんとの距離が縮まってくるでしょう。

接遇スキルはどこで身に付けるのか

美容クリニックで働く看護師は一体どこで接遇スキルを身に付けているのでしょうか。教えてもらう場合もありますが、他人の良いところを盗んで実践を重ね、自分のものにしていくというパターンが多くなります。今回は接遇スキルを身に付ける4つの方法をお伝えしていきます。

①クリニック内の研修

クリニックによっては接遇研修を取り入れているところもあります。定期的に講師を呼んで研修を行っているクリニックもありますが、多くは入職直後の数日間をつかって新人教育の一環として行っているようです。

特に脱毛クリニックでは美容未経験の看護師も積極的に採用しているので、接遇研修を取り入れているクリニックが美容皮膚科、美容外科と比較しても多いです。もしも美容未経験で接遇面に少し不安を感じているという方は接遇研修を実施しているクリニックを選んでみてもいいでしょう。

②職場の先輩の接客の様子を観察する

職場の先輩の接客スタイルを参考にするのもおすすめです。
こちらに関しては看護師に限らず受付やカウンセラーなど他職種の方々も観察することをおすすめします。受付やカウンセラーのスタッフの方々は美容未経験で入職していたとしても以前の職場で接客を行っていて接遇スキルが抜群に高い方もたくさんいるのでとても参考になります。

また、同じ看護師内で参考にするのであれば患者さんからの指名が多い先輩をよく観察するといいでしょう。施術の技術力が高くて指名されていることが多いですが、それだけではなく話していて心地よい、安心できるといった理由から指名をされていることもあります。

なぜあの先輩は患者さんから選ばれるのか、自分との違いはどこにあるのか、そういった視点で観察し、自分でも取り入れられる範囲で取り入れてみると少しずつ接遇スキルは高まっていきます。

③他のクリニックに患者として行ってみる

同じ職場のスタッフの観察をするのもいいのですが、クリニックによっては個室での対応がメインのところもあり、働きながらだと見れる範囲も限られると思います。

そこでおすすめなのが他のクリニックに患者として行ってみるということです。実際に患者さんの立場に立つことで「このタイミングで声をかけてもらえると嬉しいな」ということや「こういう説明の仕方をするとたしかにわかりやすいな」など、新たな気づきを得ることができると思います。

お金がかかるのは抵抗がある…と思われるかもしれませんが、今では美容クリニックもクーポンサイトで格安クーポンを出しているところもあり、そこまでハードルは高くないかと思います。美容クリニックで働き始めの頃はまだ美容医療についても詳しくないと思うので、「接遇スキルを高める」+「美容医療の知識を深める」という意味で価値のある投資となるでしょう。

④日常生活の中で受ける接客をよく観察してみる

他のクリニックにわざわざ行くのは少し抵抗があるという方は、自分の日常生活の中で受けている接客からまずは学んでみましょう。

業界が違っても接遇スキルは共通しているところが多くあるからです。

「このスタッフさんの接客はすてきだな」と思うものを参考にするのはもちろん、反対にしっくり来なかった接客についても深掘りするとよいでしょう。どこがしっくりこなかったのか?どう改善するべきか?というところを自分なりに考え、自分の中での心地よい接客の仕方を確立し、実践していくことで患者さんからも満足される接遇スキルが身についてくることでしょう。

実践を重ねながら接遇スキルを磨いていこう

今回は美容クリニックでの接遇術についてご紹介させていただきました。
美容クリニックで働き始めたばかりのころは十分な技術や知識もなく不安な点も多いと思いますが、接遇に関しては自分の考え方、意識次第で簡単に高めることができる部分ですし、新人だとしても患者さんから高い満足度を得ることも可能です。

大切なのは患者さんという一括りで対応するのではなく、患者さん一人一人を満足させるにはどうすればいいかを考え、そして実践していくことです。
「このクリニックを選んでよかった」「またあの看護師さんに担当してもらいたい」。そう思ってもらえるような接遇スキルをこれからも磨いていきましょう。

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つーさん
岩手県出身。アラサー。学生時代は地元で過ごし、新卒で都内の大学病院に勤め看護師生活をスタート。美容ナース歴は5年目。