パターン別患者様からのクレームへの対処法。美容 クリニック主任看護師が詳細レクチャー!

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サービス業をしていると必ず直面するのがお客様からのクレームです。
美容クリニックでも来院される患者さんからクレームをいただく機会があります。では、美容クリニックではどのようなクレームをいただくことが多いのでしょうか。また、そのクレームに対してどのような対処法があるのでしょうか。

今回は脱毛クリニック、美容皮膚科、美容外科での勤務経験がある現役美容看護師の筆者が、それぞれの分野でいただきやすいクレームとその対処法についてご紹介していこうと思います。

脱毛クリニックのクレームと対処法

まずは脱毛クリニックでいただきやすいクレームとその対処法についてご紹介していきます。脱毛クリニックでは次の2つのクレームをいただくことが多いです。

(1)毛がなくならない

まずは「毛がなくならない、思ったほど減らない」というクレームです。
脱毛クリニックに来院される患者さんは脱毛をすることで、きれいなツルツル肌を手に入れることを目指しているので、毛が減らない場合に不満を持つことは当然のことと言えます。

ですが、そもそも脱毛は当てた部分の毛が全て反応するわけではありません。
脱毛の効果を得るためには「毛周期」が大きく関係しています。

毛周期とは「成長初期→成長後期→退行期→休止期」の毛の生え変わりのサイクルのことをいいます。

そして脱毛レーザーに反応するのは成長初期と成長後期にあたる毛のみで、退行期と休止期にあたる毛は反応しません。そのため1回の照射で反応するのは10〜20%程度、5、6回のコース契約をしている場合には脱毛をする前と比べると50〜良くて80%と言われています。

また、脇や膝下などの毛がしっかりとした箇所よりも細い産毛が多い背中や二の腕のところはレーザーの反応がしにくくなるためより回数がかかってしまいます。
クレームがあった場合には上記のような脱毛の仕組みについて再度患者さんと確認しご納得いただくことが多いです。

そしてその際に、契約前のカウンセリングの時点でカウンセラーがどのように患者さんに対して説明を行っているか把握しておくとよりよいでしょう。なぜなら私たち看護師から正論を伝えることはもちろん大切なのですが、患者さんによっては「そんなのカウンセリングのときに聞いてない!」と更に不満を感じてしまうこともあるからです。

同じことについて話しているつもりでも言葉の言い回しなどで相手の捉え方も変わってきます。クリニック運営はチーム戦です。クレーム対応もスムーズに行えるように日頃から他部署の仕事内容についても把握しておく意識を持っておくとよいでしょう。

(2)硬毛化してしまった

「硬毛化」という現象をご存知でしょうか。
硬毛化とは医療脱毛レーザーを使用した際に起こりうるリスクの一つです。

通常脱毛レーザーを当てると毛の量は減り、生えてくる毛も徐々に細くなっていきます。それに対し硬毛化というのは、脱毛レーザーによる照射がかえって刺激となり、薄かった毛が逆に濃く、太く生えてしまうようになる現象のことをさします。レーザー脱毛が取り入れられるようになって数十年の年月が経っていますが、硬毛化がなぜ起こるのかというメカニズムはまだ明らかになっていないようです。

ですが、硬毛化が起こりやすい箇所は分かっており、もともと毛が細くて薄い背中、二の腕〜肩、うなじ、フェイスラインなどが該当します。

硬毛化という現象は珍しいものではないため、各クリニックで対処法がある程度決まっていることが多いです。脱毛レーザーの機械を複数種類置いているクリニックでは使用する機械を変えることでレーザーの種類を変えてみたり、機械が一種類しかないクリニックでは設定値を変えることで異なる波長で照射してみたりと対応は様々です。

患者さんから硬毛化の訴えがあった場合には医師の診察が入ることがほとんどですが、機械の設定変更などは医師の指示ではなく看護師に任されているクリニックもあります。その場合は看護師ごとに対応の仕方が異ならないように予めガイドラインを作っていることが多いのでしっかりと確認しておきましょう。

また照射に入るスタッフは毎回変わります。照射するたびに自分の硬毛化のことを一から話させることは患者側からするとクリニックへの不信感に繋がります。次回入るスタッフがスムーズに患者さんとやりとりをできるように自分が担当した際の記録は細かく残しておくようにしましょう。

美容皮膚科のクレームと対処法

続けて美容皮膚科でいただきやすいクレームとその対処法についてご紹介していきます。美容皮膚科では次の4つのクレームをいただくことが多いです。

(1)注射に関するクレーム

美容皮膚科では皮下注射、筋肉注射、点滴を行う場面が多くあります。
そしてこの注射の技術に関してクレームをいただくことが珍しくないのです。私も美容皮膚科で働き始めた当初は「保険診療ではこんなクレームをもらうことはないだろうな」と感じたほどです。

例えば「点滴を刺したところが内出血になった」というクレームです。保険診療であれば採血や注射をしたところが内出血になってクレームをいただくことはまずないでしょう。しかし美容業界だとあり得ます。点滴や採血だと刺入部が肘の正中部分(肘関節の内側部分)のことが多いため、夏場など半袖の季節には内出血が出ると目立ってしまって困るというのです。

この場合は刺入部を5〜10分ほどしっかり圧迫すること、それでも針を刺す以上内出血が出てしまうリスクはどうしてもあるということをしっかりと説明しましょう。

また皮下注射や筋肉注射の場合には「前回は痛くなかったのに、今回は痛かった。あなた下手なんじゃないの?」と言われることもあります。筆者も言われた経験がありますが、ぐさっと胸に刺さり少し自信を失いました(笑)。

ただ患者さんの前で自信を失っている場合ではないので、本来皮下注射や筋肉注射は注入中に痛みを伴いやすい処置で、その日の本人の体調によっても痛みの感じ方は変わるものだと冷静に対応しましょう(もちろん上から目線で言うのではなく、腰を低くして丁寧にお伝えしましょう)。

しっかりとお伝えして納得してくれる方もいれば、そのまま対応NGを突きつけられることもあります。その場合は悩んでも仕方がありません。その他の部分で患者さんに満足してもらえることはないかと気持ちを切り替えて業務にあたりましょう。

(2)肌が汚い人には施術を担当してもらいたくない

こちらも厳しいお言葉シリーズです(笑)。
美容皮膚科はお肌の美しさを保つ、改善する場です。よって来院される患者さんは美意識が高い方が多く、対応するスタッフの肌も本当によく見ています。私たち美容看護師は患者さんに見られる立場なのです。だからこそ他人を美しくするのが美容看護師の仕事なのはもちろんですが、自分自身の美しさを保つのも仕事のうちです。

患者さんから直接言われないにしても、「この治療はニキビ肌の改善におすすめなんです!」と話すスタッフの顔にたくさんのニキビがあったら「本当に効果があるのかな?」と感じられてしまうのは当然のことかと思います。

なのでこのクレームに対する対処法は「クレームを言われないように美しくなる努力をする」ということになるかと思います。
自分の肌がきれいになるとクレームがなくなるどころか「あなたは何の化粧品を使っているの?」「何の治療をすればあなたみたいになれるの?」と患者さんから聞かれるようになります。自分は言われて嬉しいですし、おすすめの治療を患者さんが試してくれればクリニックの売上アップにも繋がりいいこと尽くしです。ここに関しては努力するのみです。頑張りましょう。

(3)火傷してしまった

美容皮膚科で扱う機械の中には照射することにより火傷のリスクを伴うものがいくつかあります。クリニック側も火傷のリスクが少なくなるように出力設定を行い、施術者も十分に注意を払って施術にあたっていますが、それでも稀に患者さんが火傷をしてしまうことがあります。

火傷は自然に治っていくことがほとんどですが、患者さんは美しくなるために治療を受けているのであって、逆に肌に傷をつけて帰ることことはとてもショックなことです。この場合はまず自分のミスを真摯に受け止めしっかりと謝罪をしましょう。そして主任看護師や医師に状況を報告し対応を確認します。薬の処方や返金対応、今後の通院についてなどを細かく指示してくれるでしょう。

ミスを報告することは勇気のいることですが、主任看護師や医師は施術に入るスタッフを守ることも仕事のうちですし、クレーム対応のプロです。ここでただミスしたスタッフを怒るだけの主任看護師や医師は良い上司ではありません。転職を検討しましょう(笑)。

そして全て上司任せにするのではなく、今回どうして火傷をさせてしまったのか理由をしっかりと振り返りましょう。手技に問題があったのか、肌の観察力が足りていなかったのかなど原因を明確にし、次回以降の自分の施術に生かせるようにしていくことが大切です。

(4)治療効果が感じられない

治療効果が感じられないというクレームもやはりあります。
患者側からしたら決して安くない金額を支払って治療をしているので、それでいて効果が感じられなければ不満を感じるのは当然のことでしょう。

ここで大切なことは治療で得られる効果と患者さんが求める理想との間で大きなギャップがないかを確認しておくことです。

例えばたるみ治療です。今ではダウンタイムを最小限にしながらリフトアップ効果を得られる機械が数多く存在します。しかしながら、機械でリフトアップできるのには限界があり、リフトアップ効果は手術の方が圧倒的に上です。それにも関わらず1回の施術で劇的に変化すると信じて治療を受ける方も少なくはありません。
こちらの内容に関しては医師からも説明があるかとは思いますが、看護師からも説明できるようにしておいた方がいいでしょう。

また、ギャップはそこまでないけれど、治療効果が少ない場合に関しては、他に患者さんの希望を叶えるためにどのような治療が必要かというのを自分自身が提案できるようになりましょう。最終的には医師との話し合いのもと治療が決定するのですが、看護師からも治療が提案できると患者さんからの信頼度も高まります。

日頃から医師やカウンセラーさんに「こういう場合はどの治療を提案するとよいか」を教えてもらえる関係作りをしておくといいかもしれません。

美容外科のクレームと対処法

続けて美容外科でいただきやすいクレームとその対処法についてご紹介していきます。美容外科は脱毛クリニックや美容皮膚科でのクレーム対応とは少し異なります。理由としては患者さんとの関わり方にあります。

脱毛クリニックや美容皮膚科では看護師がメインとなって施術に入ることが多いため、看護師がクレームを受ける場面が少なくありません。それに対し美容外科は患者さんと直接やりとりするのは執刀医がメインであり、看護師は医師のサポート役を務めます。
そのため患者さんからのクレームは執刀医が受けるので、看護師が直接クレームを言われることはほとんどありません。よって看護師は患者さんの不安な気持ちに寄り添うということが求められます。

美容外科でいただくクレームとしてはダウンタイム中の不安感からくるクレームとダウンタイム後の仕上がりに関するクレームがあります。

ダウンタイム中の不安感からくるクレームとしては、思ったより腫れている、内出血が目立つなどがあります。実際に現場で働く者にとっては当たり前のことでも、患者さんにとっては「みんなこんなにひどいの?」「(手術を以前にも経験している場合には)前回やったときは手術直後でもこんなにひどい状態にはなっていなかったのに!」と大きな不安となり、その不安からクレームに発展することは少なからずあります。

仕上がりに関するクレームはもちろん「形が理想通りのものになっていない」という内容のクレームです。
クレームを受ける執刀医ももちろん誠心誠意の対応をしてくれていますが、他の患者さんの診察や手術にも入らなくてはならず、一人一人の患者さんと十分な時間を取りきれないことも中にはあります。その時にはカウンセラーや看護師が医師と患者さんの間に立ち、患者さんの気持ちに寄り添いつつ、不安な気持ちの軽減に努めたり、クリニック側が患者さんに対してできる最善の対応は何かを考えたりしていきます。

決して自分一人では抱え込まず、同僚ナース、他部署のスタッフにも患者さんの気持ち、考えを共有し、患者さんに対して最善のケアを行えるように協力していきましょう。

クレームは自分たちの成長に必要なもの

クレームというとマイナスなイメージを持たれるかと思います。
実際に筆者もクレーム対応に入る時は全くもって良い気分ではありません。
ですが、自分たちの改善すべき点を患者さんが教えてくれているということに対しては大いに感謝しなくてはいけないと思います。
クレームを言いたくても心の中に閉まっている患者さんも少なくはないと感じるからです。

重要なのはクレームをいただいたあとに自分たちがどのように対応していくかです。自分たちに足りていなかった部分を自覚し、改善に努め、自分自身とクリニックにとっての成長機会とできるようにしていけたらと思います。

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つーさん
岩手県出身。アラサー。学生時代は地元で過ごし、新卒で都内の大学病院に勤め看護師生活をスタート。美容ナース歴は5年目。