美容看護師のキャリアプランをまじめに考える。後悔しないために準備しておくこと

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今回は美容看護師のキャリアプランについて解説していきたいと思います。美容看護師として長く働いていく人もいれば、途中で美容業界を離れていく人ももちろんいます。一度美容看護師として働き始めた方々がそれぞれどのような思い、考えで自分のその後の看護師人生を選択しているのかご紹介していきますので、美容看護師として働き始めたその後を知りたいという方は是非参考にしてみてください。

美容看護師として定年まで働き続ける人は多い?

美容クリニックで働く看護師は20代、30代の若い世代が多いイメージかと思います。実際に美容看護師として定年までずっと働き続ける人は多いのかというとほとんどいないに等しいです。

多くの場合、看護学校卒業後に数年の臨床経験を経て20代〜30代前半で美容業界に転職し働き始めます。その後同じクリニックで働き続ける人もいれば、転職を考える人も出てくると思います。そして転職時に一つ壁になるのが年齢です。
求人情報を見てみると一部の求人には「長期キャリア形成を目的として35歳以下を募集」と記載しているところがあり、30代半ばになってくるとクリニックの選択肢がやや狭くなってきます。また、同じく求人情報に「20代〜30代前半がメインで同世代で仲良く働いています」というような文言が書かれていると、それより年齢が上の場合は「このクリニックには転職しづらいな…」と感じてしまうでしょう。

私が現在勤めている小規模な美容クリニックでは30代後半でも40代でも即戦力になりそうな経歴があれば採用していますし、一部の脱毛クリニックでは美容業界未経験の40代の看護師も受け入れていると聞くので、30代後半以降の美容業界の転職は不可能というわけではないのですが、やや難しくなるのは事実です。

そのため美容クリニックで働く30代後半以降の看護師についてはそのクリニックでの勤務期間が長く、管理職やエリアマネージャーなど責任のあるポジションを務めていることが多いです。

ではこのように30代後半以降でもクリニック内で働ける環境があるにもかかわらず定年まで働く人が少ないのはどうしてなのでしょうか。その理由についてこのあと詳しく見ていきましょう。

美容看護師として定年まで働き続けるのが難しい理由

それではここからは美容看護師として定年まで働き続けるのが難しい理由についてみていきましょう。結論からいうと女性のライフイベントである妊娠、出産、育児の際に美容看護師としての働き方に不都合が生じやすい点があるというのが理由として挙げられるかと思います。

①勤務時間が遅い

美容クリニックは仕事帰りの方にも通ってもらいやすくするために全体的に勤務時間が遅いことが多いです。脱毛クリニックですと12時〜21時勤務のところも少なくありません。小さな子供を育てているときには時短勤務制度などで働く時間の調整などをしてもらえますが、ある程度子供が大きくなってきて時短勤務が使えなくなったときに「仕事終わりの時間が遅いのは困るな…」と考えるようです。
長期間にわたり勤めるつもりであればそのクリニックの妊娠・出産・育児に関しての対応はどのような内容なのか、今まで実績はあるのかを予め確認しておくこととよいでしょう。

②土日祝日、大型連休の休みが取りづらい

美容クリニックは世の中の方々がお休みの時に忙しくなるサービス業です。そのため土日祝日の勤務はほぼ必須ですし、大型連休もまとまった休みをとるというのは困難です。クリニックによっては「土日は基本全員出勤で、冠婚葬祭以外は休むことはできない」というルールを設けているところもあります。また、年末年始はお休みのクリニックが多いですが、それでも少ないところだと3日、4日程度と短く設定されているところもあります。

平日休みの方が街の人も少なく快適に過ごしやすいと考える人も多くいる一方、周りとの休みが合わせにくいのが嫌と感じる人もいます。特に美容クリニックに転職したときには不都合に感じなかったけれど、パートナーや家族ができたことをきっかけに「土日休めないのはつらいな」「まとまった連休で家族と一緒に過ごしたいな」という気持ちが生まれ、美容業界から離れることを考え始める方もいるようです。

③正社員雇用のクリニックが大半を占めている

美容クリニックは雇用形態を正社員で採用することが多く、パート勤務できるクリニックが限られます。理由としてはクリニックが提供しているサービスの情報が他のクリニックに漏れるのを防ぐためと考えられます。例えば取り扱っているレーザーの設定出力や、手術時に使っている糸、ドクターの手術の手技などです。

美容クリニックは自由診療であり売り上げをいかに上げるか、他のクリニックとどう差別化するかというのを重要視しています。なのでライバルである他のクリニックには情報が漏れないようにしなければならないのです。
そこで正社員採用、なおかつ副業禁止と規定を定めるクリニックが多いようです。また先述したように美容クリニックでは土日祝日などに人員を確保する必要があるため、出勤日の調整が必要なパートよりも正社員として採用した方が人員の確保がしやすいということも理由の一つとなるでしょう。

正社員雇用は安定しているのでそちらの方が安心だと感じる人がいる一方で、勤務の調整がしづらい、拘束時間が長くなってしまうという理由からパート勤務でもう少し余裕を持ってスキマ時間に働きたいと考える人もいます。美容クリニックでなければ土日祝日が休みでパート職員には時間の融通も利かせてくれるクリニックはたくさんあるので価値観やライフイベントの変化をきっかけに転職する方も多いのです。

美容看護師として働き続ける人はどんな人?

ここまで美容クリニックで定年まで働く人は少ないという事実とその理由についてお伝えしてきました。しかしながら美容看護師として定年まで働き続けている人がいるのも事実です。では美容看護師として働き続ける人はどんな人なのか見ていきましょう。

①本当に美容が好き

まずは本当に美容が好きだということです。私自身も美容に関することが大好きで、自分が治療したことで喜んでくれる患者さんの姿を見るととても嬉しく、病棟で働いていたときよりも遥かにいきいきと仕事を楽しめているなと感じます。
どんなに忙しくても「今日は疲れたけど、充実していて楽しかったな」と思えます。また美容クリニックで働いていると自分自身も格安で治療を受けることができる場合が多いため、自分の美しさも保てる環境です。自分もきれいになれて、患者さんもきれいになって喜んでもらえて幸せな仕事だなと日々感じます。
私だけではなく、美容クリニックで長く働いている方はこのように感じる方々が多く、もはや仕事が趣味というイメージです。本当に美容が好きだからこそ長く働けるのは当然のことと言えますね。

②給与水準を落としたくない

続けて給与水準を落としたくないという理由も挙げられます。美容クリニックは夜勤がなし・残業ほぼなしのクリニックがほとんどで、なおかつ給料の水準が高めです。私自身、大学病院の病棟勤務を経てから20代前半で美容クリニックに転職をしましたが、転職した1年目で年収が大学病院時代の1.5倍にアップして「夜勤なしでこんなにもらえるんだ…」と驚いたことを覚えています。

そのため反対に美容クリニックから保険診療を行っている総合病院やクリニックに転職する場合には下がることが多いです。そして美容クリニックで行う業務内容、スキルはかなり特殊で保険診療の分野での応用はききません。
そのため美容クリニックでどれだけ長い期間働いていたとしてもその経験はほぼ評価されず、評価されるのは美容クリニックに転職する前の臨床経験になります。そうすると高い給与水準を保ちながら今後も働いていきたいと考えた場合には美容業界でスキルや経験を発揮するということになるのです。

③新卒もしくは臨床経験がほぼない状態で美容業界に入った

新卒もしくは臨床経験がほぼない状態で美容業界に入ったという方も美容クリニックで働き続ける傾向にあります。理由としては「②給与水準を落としたくない」の項目でも触れたように保険診療と美容クリニックでは求められるスキル、知識が違うため、保険診療で働くことに抵抗や不安を抱いている場合が多いです。

特に新卒やほぼ臨床経験なしの状態で美容クリニックで頑張って働き、主任や管理職として責任のあるポジションを経験した場合には、輝かしい実績にもかかわらず、保険診療の分野ではその実績を評価されにくいとなると美容業界内で実績を積み重ねていくのがスムーズといえます。
また新卒のころから美容クリニックで働く人は美容看護師としてスペシャリストになりたいと考えている人もいるので、その場合も自ずと美容業界で長く働くことに繋がるでしょう。

20代、30代で意識しておくべきこと

それではここからは美容業界に初めて転職する方が多い年齢層である20代、30代で意識しておくべきことについてご紹介していきたいと思います。

①可能であれば臨床経験は積み、看護スキルを身に付けておく

こちらは美容業界に転職する前段階のアドバイスです。そもそも美容クリニックでは新卒採用を行っているところが少なく、ほとんどが臨床経験1年以上を条件として提示しています。

この記事を書いている私も大学病院で数年の臨床経験を経て美容業界に転職したのですが、大学病院ではNICU(新生児集中治療室)勤務でした。もともと看護学生のころから美容看護師になることを目標としていたので、「とりあえず臨床経験だけ積んで転職すればいいから、赤ちゃん好きだしNICU配属の希望を出そう」と軽いノリで希望し、配属されました。
ただそこでは注射、採血は全て医師が行い、成人相手に行う看護とは全く異なる業務を行っていたため、一般的な看護スキルが乏しいまま美容業界に転職してしまいました。今はまだ美容クリニックでの仕事を楽しんでいますが、今後価値観の変化で美容から離れたいと思った時に「自分は看護スキルがほとんどない」という不安を抱えることになるんだなと自覚しており、きちんと看護スキルを身に付けてから美容看護師になればよかったと後悔している部分もあります。

もしも美容業界を離れる場合に自分の選択肢を幅広く持っておくためにも可能であれば臨床経験は積んで、看護スキルを身に付けた上で美容業界に転職することをお勧めします。

②楽そうという理由で転職しない

さまざまな理由で美容看護師になることを決意すると思いますが、「楽そうだから」という理由で転職するのはやめましょう。

先述したように美容クリニックは保険診療と異なる部分が多いため美容看護師としての経験は保険診療ではあまり評価されません。それを理解した上で「美容に興味があるから頑張ってみたい」というのはいいと思いますし、挑戦してみるべきだと思います。

例えば脱毛クリニックは美容未経験で臨床経験が浅い方でも比較的簡単に手技を習得でき、なおかつ給与も高水準というメリットがあります。しかしながら4年ほど脱毛クリニックで勤務する友人からは「最初は病棟より楽なのに給料もいいから最高だって思ってたけど、最近は脱毛以外の施術をすることがほとんどないから、注射をすることもないし、なんだか看護師としてのスキルがなくなってる感じがしてすごく不安。もう他の職場では働けないのかもって心配になる」という発言が聞かれました。
美容看護師として働くにあたっては、「楽そうだから」「なんとなく」という理由ではなく今後どう成長していくのか、どういう看護師として働いていくのかも明確にしておく必要があるでしょう。

③自分はスペシャリストになりたいのかジェネラリストになりたいのか考える

先ほど美容看護師として働くにあたりどういう看護師として働いていくのか明確にする必要があると述べました。そこで考えるのがある分野に特化したスペシャリストを目指すのか、幅広い知識やスキルを兼ね揃えたジェネラリストを目指すのかを考えておくといいでしょう。

脱毛のスペシャリストになりたいのであればいくつかの脱毛クリニックで経験を重ねてあらゆる脱毛レーザーの使い方・特徴を理解していくというのもいいですし、幅広い知識を持った美容看護師として働きたいのであれば美容皮膚科、美容外科、脱毛クリニックとさまざまなフィールドで経験を重ねていく必要があります。

もちろん、美容看護師として働くのは若いうちだけと割り切って、ゆくゆくは保険診療の分野に戻るという選択肢ももちろんありです。しかし、もし美容看護師として長く働いていきたいと考えるのであれば、35才から転職しづらくなることを考慮した上で、それまでは自分のスキルアップを積極的に行い、その後は責任あるポジションでクリニック運営に必要な人材として働いていくという流れにしていけるといいでしょう。

常に先を見据えて満足のいく選択を

今回は美容看護師のキャリアプランについて解説してきました。人それぞれプライベートや価値観が異なるため人の数だけキャリアプランは存在します。そのときに「とりあえずこの選択にしておこう」「自分のスキル的にこの選択しかできない」となってしまうと看護師としてのやりがいを感じにくくなってしまうでしょう。
常に「私が重要視しているポイントは○○だからそれが達成できる選択をしよう」と常に自分が選択の主導権を握れる立場にいることが大切かと思います。今だけでなく、先も見据えて自分自身の看護師としてのキャリアを積み上げていきましょう。

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つーさん
岩手県出身。アラサー。学生時代は地元で過ごし、新卒で都内の大学病院に勤め看護師生活をスタート。美容ナース歴は5年目。