今回は美容業界への転職が決まったあとに内定〜入職までの期間で勉強しておくべきことについてご紹介していきたいと思います。
筆者は現在美容ナース歴5年目で、複数の美容クリニックでの勤務を経験してきました。そのため美容クリニックへの転職が決まった知人看護師や自分が面接で担当した業界未経験の看護師の方々からは入職前にさまざまな質問や相談を受けます。その中で特に多く受ける質問が「入職前に何か勉強しておいた方がいいことってありますか?」という内容です。
たしかに美容業界で行う内容はとても特殊で、病棟で必要とされる知識・スキルとは大きく異なります。私自身も大学病院での臨床経験を経てからの大手美容クリニックへの転職でしたが、本当に大変な毎日でした。そしてその経験をしてきたことで、「この知識を早くから身に付けておけば良かった」ということも分かるようになりました。
美容クリニックへの転職を検討中の方や、すでに美容クリニックで働き始めている新人さんにとっても役に立つ内容かと思いますので、良かったら参考にしてみてください。
美容クリニックへの転職が決まったらクリニックのホームページやSNSの内容をこまめに確認しておこう
美容クリニックは大きく分けて脱毛クリニック、美容皮膚科、美容外科の3つに分類されます。それぞれの分野で扱う内容が異なるため、勉強しておくと有利な内容も異なってくるのですが、いずれのクリニックに入職するとしても必ず確認しておいた方がいいのが今後勤めることになるクリニックのホームページやSNSの内容です。
就職・転職活動の時点では必ず確認している部分かとは思いますが、逆に内定が決まってからはあまり確認することがなくなる部分でもあると思います。
ホームページのトップページにはそのクリニックで特に注力している施術内容や商品が分かりやすくアピールされていることが多いです。そのため未経験者で美容に関する知識がなく、どこから勉強していけばいいだろう…と悩むのであれば、まずはそのクリニックが力を入れている施術や商品に関して学んでいくと効率がいいでしょう。
またクリニックによってはドクターやスタッフがブログ記事を書いていることがあります。その記事には一般の方向けに分かりやすく美容医療に関する解説が載っていることもあるのでチェックしておくと良いです。
またSNSに関してもホームページと同様に力を入れている内容がわかることはもちろん、現在行われているキャンペーン内容や症例写真がたくさん載せられています。来院される患者さんは今ではまずインスタやツイッター等でお得なキャンペーンを行っているクリニックを見つけ、そこからHPを見て、良さそうであれば来院するという導線を踏まれることが多くなってきています。
そして施術中に患者さんから「ホームページで見たんですが」「インスタに載っていた内容で質問なんですけど」などと話を振られることがあります。
そのときに経験が浅いながら掲載されている内容を把握している新人と、全くもって把握していない新人とではどちらがしっかりと会話に対応できるかは明確です。
全てを理解するには時間がかかると思いますが、クリニックがどんな方針で運営しているのか把握しておく上でも予め目を通しておくようにしましょう。
脱毛クリニックに内定が決まったら勉強しておくべきこと
それでは脱毛クリニックに内定が決まった場合に勉強しておくべきことをご紹介していきます。
自分のクリニックで使用している医療脱毛レーザーについて調べておく
まずはこれから働く予定のクリニックで使用している医療脱毛レーザーに関して勉強しておきましょう。
大手脱毛クリニックの場合は接遇や脱毛に関する知識の勉強、実技研修を経てから現場に入るというところもありますが、そちらは少数派です。多くは入職してからしっかりと機械に関して学ぶ時間がないままに実技練習をし、そして実践、つまり患者さんへの照射へ移るという流れになります。
では機械に関して知識がなくてもいいのかというとそうではありません。知識がなくても機械を扱うことはできますが、それなら敢えて看護師が照射する必要はないでしょう。医療レーザーにはリスクを伴う可能性があり、使用するからにはやはり専門的な知識は必要不可欠です。機械の特性を理解しながら患者さんの肌の観察を行ったり、機械の出力設定をしたりする必要があるからです。
クリニック側も新人指導の際に細かい知識面まで教えてあげたい気持ちはあるのですが、十分な時間が確保できないことが多く、「知識面に関しては自分で調べて勉強して身に付けて!」というところも少なくはありません。
しかしながら入職直後は現場での業務が忙しく、家に帰ってから勉強する体力と気力がなくなっている方がほとんどかと思います。そのため、入職後の自分を楽にさせてあげる意味でも予め勉強しておくことをおすすめします。
他のクリニックで使用している医療脱毛レーザーについても調べておく
余裕があれば他のクリニックで使用している医療脱毛レーザーについても調べておきましょう。日本の医療脱毛で使用されるレーザーは「ダイオードレーザー」「YAGレーザー」「アレキサンドライトレーザー」の3種類で、それぞれメリット、デメリットも異なります。
施術中に患者さんから機械に関する質問を受けることもあるので、そのときに他の機械、他のクリニックとの比較も含めて説明できるようになると患者さんから「この看護師さんは知識が豊富だな」と信頼を得やすくなります。
医療脱毛で使用される機械の種類は多くないため、入職前の時点でもし余裕があるのであれば「この機械にはどのレーザーが採用されていて、どのようなメリット・デメリットがあるのか」というところまでまとめておくとよいでしょう。
美容皮膚科に内定が決まったら勉強しておくべきこと
それでは続けて美容皮膚科に内定が決まった場合に勉強しておくべきことをご紹介していきます。
紫外線に関する知識をつけておく
まずは紫外線に関する知識をつけておきましょう。
自然な若返りや美肌になるための治療を提供していくのが美容皮膚科の役目ですが、患者さんとの関わりの中で必ずお伝えするのが「紫外線対策はしっかりとしてください」ということです。
ではなぜ紫外線対策が必要なのか、という部分を深掘りしていくと自然と美容皮膚科で必要な知識が身についていきます。一般的に紫外線というとシミの原因となるもの、という印象が大きいと思います。このことに間違いはありません。
では紫外線を浴びると皮膚の中でどのような反応が起きることでシミができるのか。皮膚の構造はどうなっているのか。なぜ若い人はシミができにくく、年齢を重ねていくとできやすくなっていくのか。紫外線によって引き起こされる肌トラブルはシミ以外に何があるのか。この内容をパッと答えられる方というのは非常に少ないと思います。ですが、美容皮膚科で働くのであれば当然のように必要となる知識です。
人間の老化が進行していく原因は他にもたくさんありますが、そちらに関しては紫外線に関する知識を深めていくうちに自ずと触れていき学ぶことになると思います。ここをしっかり学んでおくと患者さんとの会話の中でも説得力のあるお話をすることができますし、自分自身が美容が大好きだという方は自分のスキンケアや生活習慣に活用できる実用的な知識かと思います。まずは紫外線に関して知識を深めていきましょう。
クリニックで取り扱いが多い薬について調べる
クリニックで取り扱っている薬について調べることもおすすめです。
保険診療の現場で働くときにも数多くの薬に触れ、必ず使用する薬剤に関しては調べてから業務にあたっていたと思います。その流れは美容クリニックでも変わりません。
美容クリニックでは内服薬の提供、もしくは点滴や注射での薬剤投与により患者さんの美肌を作っていきます。よく使用される成分としては、トラネキサム酸、ビタミンB群、ビタミンC、Lシステイン、グルタチオンなどが挙げられます。
クリニックによっては内服薬や点滴の内容をホームページに掲載しているところもあるので、勉強のためにも自分のクリニックだけでなく他のクリニックの情報も見てみるといいでしょう。
美容クリニックで使用する薬剤はかなり限定的です。そのため一度覚えてしまえば今後他のクリニックに勤めるとなった場合にも応用が効くものばかりですので早めに勉強しておくことをおすすめします。
美容外科に内定が決まったら勉強しておくべきこと
それでは続けて美容外科に内定が決まった場合に勉強しておくべきことをご紹介していきます。
手術で使用する麻酔に関する勉強をする
美容外科への内定が決まった場合には手術で使用する麻酔に関する勉強をしておくといいでしょう。
手術室経験があって転職する場合は問題ないのですが、手術室未経験で美容外科に転職する方々も多くいます。未経験でも特に問題なく働くことができますが、予め知識をつけて入職すると入職後がかなり楽になります。手術で使用する道具などはクリニックごとに異なり、種類も膨大なのでそちらについては入職してから実践の中で覚えていけば問題ありません。
それに対して手術中の麻酔に関する注意事項、観察項目についてはどのクリニックでもある程度共通する点が多いため、入職前にも勉強がしやすいと思います。
手術で使用する麻酔というのは具体的には静脈麻酔、全身麻酔、硬膜外麻酔となります。これらの麻酔の名前を聞くと大掛かりな手術のときにのみ使う印象があるかもしれませんが、二重埋没法など目元の簡単な手術でも静脈麻酔を使用することもあります。保険診療ではなく、自由診療であるからこそ患者さんが希望すればあらゆる手術で使用することがあるのです。
入職してからは一つ一つの手術で必要な物品や手術ごとの消毒の仕方、手術介助の手順を覚えることに必死になると思います。麻酔に関しては今後必ず覚えることになる部分ですので、少しでも入職後の負担を減らすためにも入職前に勉強しておくことをおすすめします。
二重整形について学ぶ
細かい手術の内容に関して勉強するのであればまずは二重整形の分野から勉強していくといでしょう。
クリニックごとに力を入れている手術は異なり、どの手術をメインとしているかは先述した通りクリニックのホームページをみればある程度分かると思います。中には骨切りなどの顔の輪郭形成や脂肪吸引などある程度大掛かりな手術を専門としているクリニックもありますが、あらゆる手術を行えることを強みとしているクリニックの方が多いかと思います。
あらゆる手術を行うクリニックへの就職が決まっている場合はどこから勉強していけばいいか悩むところかと思いますが、その場合はまずは二重整形に関する勉強から始めましょう。
二重整形は整形手術の中で圧倒的に人気な手術になります。大きく分けて二重埋没法と二重切開法がありますが、まずはそれぞれのメリット、デメリットからおさえていきましょう。次に二重埋没法に関してもいくつか方法があり、それぞれにメリット、デメリットがあります。そのことを勉強しておくと目の解剖学に関しても自然と頭に入ってくるでしょう。
件数が多い手術の知識をつけておくと入職後の心の余裕にもなりますし、患者さんから質問を受けたときにも対応しやすいかと思います。そこから余裕があれば鼻など他の部分の手術についても勉強していくという流れで問題ありません。
今ではYouTubeなどで美容外科医がわかりやすく解説している動画も多く見られるようになりました。このような動画は一般向けなので業界未経験の方にも理解しやすい内容かと思うので、そこで基本的な知識をつけてさらに専門的な内容を深堀りしていくのもおすすめです。
勉強は自分のため、そして患者さんのためになる
ここまで入職前に学んでおくべきことに関して解説してきました。
今回の内容を勉強していなかったからといって入職後に全然ついていけないという事態にはならないと思います。しかし、入職後は初めてのことばかりなので覚えることが多く、慣れない環境で余計に疲れやすいため多忙な日々を過ごすことになると思います。
そのため予め勉強しておくことは入職後の自分のためになるので余裕があれば手をつけておくことをおすすめします。
また、未経験の新人と言えども来院される患者さんは美容の専門家として接してきます。自分がしっかりと知識をつけておくことで早い段階から患者さんから信頼を得られる美容ナースとして働くことができると思います。
勉強は苦痛を伴うかもしれませんが、自分のため、そして信頼してクリニックへ来てくれる患者さんのためと思って、入職する前も、そして入職してからも学ぶ姿勢を忘れずに取り組んでいきましょう。