アートメイク看護師の仕事内容とやりがいとは

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まずは筆者の紹介です。私はナース歴13年目ですが、臨床経験0で美容業界に入りました。

ただ、さすがに臨床未経験で採用してくれる美容クリニックは少なく、本当は初めから美容皮膚科に入りたかったのですがあえなく撃沈。まずはそれでも雇用してくれる美容系求人を探し、たどり着いたのが脱毛クリニックでした。

その後のことを考えるとある程度の経験値が欲しかったので、2年ほどそちらで勤務し、幸い、脱毛だけでなくピーリング、光治療や痩身治療もいくらか導入しているクリニックだったので、その知識と経験を持って大手美容クリニックへ転職することができました。

念願叶って美容皮膚科に入職できた私はとにかく一生懸命に学び働き、役職に就くまでになりました。8年弱働いたところで、次へのステップアップとして選んだのがアートメイクナースでした。現在アートメイクでは最大手と言われている専門クリニックへパートとして入職して1年間修行。その後フリーランスとして独立して今に至ります。

今回は、アートメイクについて、仕事内容を主に書いていきます。 これからアートメイクナースを目指す方に、私の経験をお伝えできたらと思います。

二足の草鞋を経てアートメイクナースになるまで

美容ナースになるきっかけ

思春期〜大人にかけてずっとニキビに悩まされていました。皮膚科に行ってもなかなかスッキリとは治らない日々を何年も過ごし、就職と共に東京に出てきてから、美容皮膚科の存在を知りました。自分自身が綺麗になるための知識を学びながらお給料がもらえるなんて最高の条件!と思い、美容皮膚科に就職を決めました。

その後約10年ほど美容皮膚科に勤務し、うち8年弱は大手美容クリニックだったので沢山の種類の治療法を学び、段々と目新しいメニューもなくなってきた頃、自分の中で一通りやり切った感がありました。

アートメイクとの出会い

その時私が次に興味を持ったもの、つまり思春期のにきびと同じで自分の悩みだったもの、眉毛のアートメイクです。私はもともと生まれつき眉が薄くて、そのうえ学生時代は歌手の影響で細い眉が流行り、20代ではアイドルの影響で困り眉が流行り…眉毛を抜いたりレーザー脱毛してしまい、少ない眉がほとんど無くなっていました。

ただ、そのタイミングではまだ今のようにアートメイクは盛り上がっている時期ではなく、当時といえばご年配の方がやっていたような塗りつぶされた眉毛のアートメイクが想像されるような時代でした。

皮膚科施術にいらっしゃる患者様の中で、眉毛に横断歩道の様な線でアートメイクしている方が居られるのを数名見かけ、塗り潰しよりは自然だし、私はやるならこれがいい!と思ったのです。

そこからはアートメイクについて、ネットやSNSを調べる日々が続きました。

そんな中、毛並みで書く手法をやっているクリニックを一件見つけることができました。これなら私も受けたい!学びたい!そう思いましたが、美容ナースをやっていた関係上、施術というものは誰がやっても同じではないということを知っています。

だから私はひたすらその情報について調べました。しかし、まだホームページはあまり充実しておらず、医師も施術者もほとんど情報のない状態でした。

その時点では私はそこで施術を受ける気にも学ぶ気にもなれなかったので、他の、毛並みではないパウダーの手法で綺麗に施術しておられる方のサイトを2つ見つけ、講習代について問い合わせをしましたが100万円近い金額を提示されました。一旦、その貯金をする為にアートメイクをする事は諦めて、引き続き美容クリニックで仕事することに決めました。

約1年後、再度そのアートメイクについて調べると、少しずつ盛り上がってきており症例も出て来ていたし、サイトを見ると内容も充実してきていました。なんと、求人募集も始まっていました。

すぐに求人に応募し、当時はまだアートメイクの施術者が少なかったためか、その場ですぐに合格をいただきました。

その時は美容クリニックに所属していたので、正式な入社は美容クリニックを退職してからということで、先に講習のみ開始。仕事がお休みの日にアートメイクのクリニックへ行き講習を受け、二足の草鞋でアートメイクナースを開始しました。

アートメイクとは

アートメイクと刺青(タトゥー)の違い

お顔の様々な部位に、針とインクを使って色を入れていく技術です。似ている技術としては刺青があります。

刺青とアートメイクの違いをお話しすると、まず刺青は真皮層にカラーを入れ込んでいるためにターンオーバーで外に出ることが出来ず半永久的に持続するものです。それに対してアートメイクは表皮層に入っており、皮膚が代謝できるエリアにカラーを入れ込んでいるため、刺青のように半永久的には持続せず大体1年から数年で薄くなっていくものと言われています。

アートメイクは医療行為

現在、アートメイクは法律で医療行為と定められており、私達看護師は医師の監視下で施術を行うことができます。

以前はエステや自宅サロン、美容室などで資格のない方がされていた時代が長くありましたが、彼らによる施術は違法になるため行うことができません。実際に逮捕者も出ており、施術者たちは無職になって大変困ったと言う話も聞いていますが、現在は看護師が施術をすることが主流となっています。

アートメイクの施術部位

施術部位としては主に眉毛、唇、アイラインですが、それ以外にも頭皮や生え際、ほくろをお顔やお体に施術することもあります。

アートメイクナースの仕事

アートメイクナースの仕事内容、一日の流れ

アートメイクの仕事内容はほとんどが施術となります。その点は、美容外科、美容皮膚科と同じですが、アートメイクは休憩時間や施術と施術の間の休憩時間(のようなもの)、患者様への営業や施術のための洗顔のご案内などの細かい仕事時間が無く、そこは違いがあると感じています。

職場の体制にもよりますが、大抵の場合、受付からカウンセリングまでをカウンセラーがしてくれて、施術のみをアーティスト=ナースが行うという流れです。

私はフリーランスなので受付とお会計のみをスタッフさんが行ってくれます。カウンセリングから施術までが私の担当です。

朝は1件目の患者様の予約時間に合わせて出勤します。1日の流れとしては、出勤したらまず施術室の準備を整えます。整えるといっても物品を揃えて並べるだけで大した時間はかからない内容です。

患者様がいらしたらカウンセリングをします。直接カウンセリングをして、その場で心配な事は全て解決してから、ドクターの診察に入ります。私のようにフリーの場合、施術をしにいくクリニックのドクターがアートメイクの知識を多く持ち合わせているかと言うと、有る方もいますしそうでない方もいらっしゃいます。なので、完全に私が主体となってカウンセリングをするといったイメージです。 

お部屋へご案内し症例写真のお写真を撮影後、ペンシルでお顔にデザインを書いていきます。デザインは『黄金比』というものを使ってその方に一番似合う形をデザインします。

黄金比の算出方法があり、フリーハンドでもできます。私はプロ仕様のコンパスと呼ばれる計測器と、一般的な定規の2つを使用して算出しています。

黄金比は1番綺麗な比率が出てきますが最終的には、骨格、筋肉の動き、お客様の雰囲気、服装、話し方や表情等々を加味して、お好みに合わせてデザインしていきます。

お顔は左右対象という方はなかなかおらず、特に眉毛の駆け込み寺のような立ち位置である私達の元には、割と左右非対称の方が多いように感じます。ですので、デザインはなかなか苦戦することも多いです。なるべく左右対象になるように合わせてデザインしていきます。

例えば眉頭1本違うだけで印象は大きく変わるため、お客様にも鏡でしっかり確認していただき、何度も修正をしてお互いに納得の行くデザインができたら実際に施術をしていきます。

アートメイクは1年から数年持続するものですので、例えば間違えた入れ方をしてしまったり、好みでない入れ方をしてしまった場合、患者様はずっとその眉で生活していかなければなりません。かなりの責任感を持って施術に臨む必要があります。

アートメイクはお客様を感動させることもできるし、逆に落胆させることもできる、とても素晴らしい面がある一方、間違うと怖い面もある技術だと考えています。

お客様お一人お一人を本当に大切にしており、お時間はたっぷりかけているので、私の場合初回の眉の方はカウンセリングも合わせて2.5時間とり、しっかりお互いのイメージをすり合わせながらご納得いただける仕上がりになるよう努めています。

アートメイクナースのやりがい

美容皮膚科ナースと似ているところがあると思います。患者様と一対一の施術で、目の前で結果が得られる治療ができることです。ただし大きく違う点は、絶対に失敗できないことです。

失敗しても良いように弱く(薄く)施術することもできないですし、またかなり残るようにしたらそれは刺青になってしまいます。全て自分の手の感覚でベストな層を見つけ、針を入れていきます。価格も高額なため期待値も高いです。

また継続的に続けることで結果を出すものではないので、大体の方が2〜3回で終了し、しばらく会うことはなくなります。ということは、2〜3回でしっかりとした結果を出さなければならないといったプレッシャーも強くのしかかります。

これを日々何人も繰り返し施術していくことは、精神的にかなりのプレッシャーになりますし、たまにそのプレッシャーに負けそうになることもあります。

美容皮膚科ナースとオペドクターの中間位の立ち位置なのかな、と感じたりすることもあります。自らの手で皮膚を切るという点はドクターに似ているし、でもドクターではないからやはりナースとしてより踏み込んだ、寄り添ったコミュニケーションができるという点は美容皮膚科ナースに近いところもあります。

アートメイクナースを目指す方へ

アートメイクナースの現状となるために準備すること

一番伝えたいのは、アートメイクを簡単にできるものと絶対に考えないで欲しいということです。近年アートメイクのできる場所や施術者が急激に増えており、少し飽和状態になっているようにも感じます。だからこそアートメイクが身近に感じられてしまい、私でもすぐできるのではないか、とつい考えてしまう方も少なくないように感じます。

実際私のところにも今は未経験だがフリーランスとして働くにはどうしたらいいか、といったような問い合わせも散見されます。まずフリーランスになる前にやるべき事はたくさんあるし、フリーランスになったとしても日々トレーニングやアップデートが必要な、とても難しい技術です。集客も自分自身でする必要があり、誰も助けてくれません。

手技的には、不器用な方や美的センスがあまり良くないと自分自身で感じるところがあれば、もしかしたらアートメイクナースは向いていないかもしれません。逆に自分は器用である、センスがある、と感じる方は向いているかもしれません。

お客様はアートメイクをするにあたってとても緊張してご来院されるため、この緊張を即座に解くようなコミュニケーション能力も必要になります。これがないとお客様は緊張したままデザインを決めることになり、思ってもない言葉を口にされるかもしれないし、言いたいことが言えずにそのまま受け入れてしまって希望でないデザインのままアートメイクをしてしまって、クレームにつながる可能性もあります。

まだ日本では教育機関が少なく費用も大変高額になるところが多いです。マイクロブレーディングなどの技術は海外から入ってきているためやはり海外の方が上手なアーティストさんが多く、講習を受けるため海外へ飛ぶ必要も出てくると思います。

そうなった場合渡航費や講習代も含めると、ある程度まとまった資金を用意しておく必要もあると思います。個人的な思いとしては講習を受けてすぐにフリーランスとして仕事をすることはまず難しいと思います。技術も経験も伴わず患者様を持っているわけでもなアーティスト=ナースがフリーとして活躍する事はなかなか難しいと思います。

まずは1年間、最低でも修行期間と思って低賃金であっても知識や経験や技術を積み重ねる必要があると考え、自分はそうしました。最近、アートメイクナースは稼げるからいいとか、稼ぎたいからなりたいとか、そういった話題もちらほら聞こえてきます。もちろんそういった気持ちも否定するわけでは無いですが、集客力や技術がなければ稼ぐことは難しいかもしれません。

現役アートメイクナースから、未来の仲間達へ

今後アートメイクナースを目指される方は是非、よこしまな気持ちではなく「この素晴らしい技術でお客様に喜んで頂きたい!」という真っ直ぐな気持ちで私たちの仲間になってほしいと思います。

そうすればきっと、良い患者様がつき、口コミで噂はどんどん広がり、同じ様な志の高い仲間に巡り合い、お互いに助け合いながら上を目指して行ける素敵なアートメイクナース人生が送れると思います。

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Mei
看護師国試合格後アパレル会社へ就職。その後、臨床経験0のままで美容業界へ。美容ナース歴13年。現在はフリーのアートメイクナースや講師として活動中。