部位別アートメイク技術論。実践に基づく眉、リップ、アイライン施術の極意

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今回はアートメイクの技術面について、部位別に解説していきます。これからアートメイクナースを目指す方、気になりはじめたばかりの方でも分かりやすいように、なるべく簡単な内容にしています。

専門性の高い施術ですのでたまにマニアックな説明も含まれますが、是非最後までお読み頂きアートメイクについてより深く知る機会になればと思います。

アートメイク総論〜どの層にいれ、それをどう測るか〜

先ずはアートメイクの総論からお話します。

アートメイクでとにかく気をつけるべき事は深掘りすると刺青になってしまうので、絶対にそれをしてはならない!という事です。

以前の記事でも述べているように、アートメイクと刺青の違いは基本的に層の違いです。この部分をしっかりと理解する必要があります。

そんなことを言っても、私自身も初めのうちはどの層か分からずに深掘りしたり、逆に傷が浅かったりしてジャストの位置に入らない事が殆どでした。

深堀りを恐れて浅い層を狙ってしまうと、二回目のリタッチの時に殆ど残っていなかったり、使用したカラーの想定している色味よりも明るい色で発色してしまったする事もあります。

逆に深堀りしてしまうと、刺青の様に長い間残ってしまうリスクがあります。また、想定していたカラーよりも暗く定着したり、線が太くなって綺麗に見えない状態になったりします。

当たり前ですが、ちょうど良い深さを知るためにお肌を輪切りして観察するわけにはいきません。ではどうすればその的確な位置が分かるのでしょうか。それは手の感覚や、音、出血の仕方などかなり曖昧な情報からのみなのです。それらのあらゆる情報をいくつも組み合わせることで、アートメイクが最も綺麗に、かつしっかりと定着してくれる層を探っていきます。

 

それを一体どれだけの期間で学べるでしょうか?つまり、アートメイクを正確に行うためには絶対的に経験値が必要であるということです。

それも、初回施術の経験のみを積んでいるだけでは物足りません。二回目のリタッチの時にこそ、自分のスキルが分かるのです。

前回分の定着を見た時、その方の肌質に対して針の深さやカラーチョイスなどが正確だったかなどの関係性が分かるからです。

このように、ただ針を入れると一口にいってもその知識の奥深さは底なし。これがアートメイクです。ただデザインがかっこいいだけでも、直後の見栄えが美しいだけでも、ダメだということです。

ここまでの細かい内容全てをお客様に理解して欲しいわけではありませんが、ある程度の教育は必要と考えています。

それが結果的にお客様も自分自身も守る事になるからです。

もしハイリスクな状況にあるならば、それをきちんと伝えてなるべくリスクを避けるように促します。

考え方にもよりますが最悪、初回で汚い状態に定着してしまうより、様子を見て一度軽く入れてみて、問題無ければ二回目のリタッチにてしっかりと定着させていくということでも良いでしょう。

私は性格的にあまり無理をしたくないので、お客様にも極力徐々に完成させていくのがお勧めであると伝えます。少し怖がらせるくらいでも構いませんから、きちんとリスクを伝えて納得頂いてから施術に入るのがおすすめです。

アートメイク部位別技術論

眉の技術

パウダー技術

パウダー技術はアートメイクの中で最も簡単な技術かと思います。デザインの時点で問題がなくできていれば、何も考えずにその部分を正確にたどっていくだけできちんとその形を作ることができます。

つまりその中を塗りつぶしていくのがパウダーの技術です。通常は眉頭の部分をぼかしたり輪郭の部分をぼかしたりすることでよりナチュラルに見せることをします。

この塗りつぶしの仕方を間違えなければ初心者でもある程度上手に見えるようなアートメイクが完成します。

パウダーの技術はマシーンで行うタイプとニードルで手で行う技法の2パターンがあります。

私は講習の時に教わったのが手で行うタイプでしたので今回はこちらについてご説明していきます。

パウダーの針は様々有りますが、私が使用した事があるものは、一本タイプ、何本か束になったタイプ、長く二列になっているタイプです。

始めたての頃は1本や何本か束になっているものを使いましたが、丁寧にはできるものの時間がかかってしまい効率が悪かったため、現在は長く二列になっているものに変更しています。小回りがきかないですが、範囲が広くなるためある程度時間短縮につながります。

個人的に初心者の頃は一本タイプや束になっているタイプが小回りが利くので、やりやすいように思います。

私はパウダーマシーンを行った経験はありませんがこちらも時間が早く効率がいいと聞いています。今のところ不便を感じていないので私自身は手で行っています。

マイクロブレーディング技術

次に毛並みのことをお話ししたいと思います。毛並みはストロークと呼んだりマイクロブレーディングと呼んだりします。

この毛並みに関しては、かなりアーティストの癖や好みが反映されるものになります。また流派によって毛流れの教え方も違います。 例えば上の毛と下の毛が集まるポイントがあったり、眉頭とそれ以降の毛の中立的な立場の毛があったりというのを私の流派では教えてもらいました。

しかし、他のクリニックで学んだ元同僚と話をしていたところ、そんなことは教えてもらっていないといいます。

ですから、そういった書き方を知らずにただ毛並みを書いているクリニックやアーティストさんも居るようですがこれが悪いと言っているわけではなく、ストロークはとにかく毛に見えれば良いので、自分がきれいな毛並みだと思う毛流れを描いていけばいいと思います。

私もいまだに毛並みは毎日勉強しています。いつまでも同じ形ばかり描いていてはいけないと思うことがあるからです。

やはり毛並みにもある程度の流行があったり、デザインに関しても流行があるように思います。もちろんこのアーティストさんはこの形!この毛流れ!といったような一定の決まりがあった方が集客がしやすかったりブランディングしやすいと言う側面もあるかとは思います。

しかし、私はなるべくお客様のご要望やその時の流行りに柔軟に対応したいと思っているので、あえて固定はしないようにしています。

その為には情報収集が必須なので、毎日他のアーティストさんの作品のチェックは絶対に欠かしません。

国内外問わずいいなと思ったアーティストさんのストロークを人工皮膚に真似して描いてみて、自分の手や癖に馴染が良かった場合、そのストロークをお客様へ施術させていただいています。

一番苦労したところはもちろん毛並みの書き方が難しかった事もそうですが、肌の薄さ、肌質は人それぞれなのでその肌質に合った手法や針の深さなどを学ぶことに大変時間がかかりました。

これに関しては私は以前のクリニックで深いところまで教えてもらうことができなかったので、正直毎日自分の施術をして二回目で帰ってきたお客様の反応を見て学習するしかありませんでした。

例えばオイリー肌の方、毛穴が大きい方などが落ちやすい、逆にドライ肌やきめ細かい肌の方は定着しやすいといったことです。

これは私個人の感じ方ですので表現の仕方や感じ方は他のアーティストさんとは異なる部分があるかもしれません。落ちやすい方は少し濃いめのカラーをお勧めしたりすることで一定の定着率をキープすることができます。

リップの技術

コロナ禍でのマスク生活のお陰か、ここ最近リップアートメイクの需要がめきめきと上昇しています。リップアートメイクはくすみを取ること(茶色い唇、紫の唇、グレーっぽい唇のこと)、唇にあるシミをカバーアップすること、唇の輪郭をはっきりとさせること、唇の色味をつけること、唇の色味をもっと強く発色させること、唇の形を整えること、これらを目的として施術を行います。

個人的に1番難しいと感じる事例は、くすみを取ることです。

くすみを取るためにはカラーセオリーを知っておかなければなりません。オレンジ系を使用するのかピンク系を使用するのか、はたまたヌーディーカラー系を使用するのか。知識と経験によってある程度の見当をつけていきます。絵の具の足し算をしていくイメージでしょうか。元々ある唇の色に、この色を足すと何色になるかな?といったように想像します。数学と美術を組み合わせた数式のようなものです。

唇は、普段会話をしたりお食事をしたりとよく使う部分です。定着には少し回数を要す事があり、三回ほどするとより綺麗に定着すると言われています。

元々色味が無い方や、くすみが強くない方は二回でも御満足頂けることもよくあります。くすみが強い方ほど回数がかかる可能性が高いため、予めそれはお伝えした方がトラブルになりにくいです。

リップは一般的に他の部位と比べて少しお値段が上がる事がほとんどなので、予算をみながら回数を検討される方が多い印象です。初めのカウンセリングである程度の予測は立てておく必要があるかと思います。

またリップは一般的に痛みが強いと言われており、それが心配で一歩踏み出せないという方が多いです。確かに塗る麻酔のみでは少々辛そうな方も稀にいらっしゃいます。私の場合、麻酔のメーカーさんを変えたらだいぶ痛みの感じ方が変わりましたが、以前は施術中ずっと痛いと仰る方もいらっしゃったのでその場合には、他の部位と違ってリップはブロック注射麻酔を使用する事が出来ます。ブロック注射をすると、その注射自体はかなり痛みを伴いますがその後はほぼ完全無痛にて施術する事が出来ます。

アイライン

こちらも、コロナ禍の影響なのかまつ毛エクステンションを外して自まつ毛を育てている方が増えたせいか、アイラインの施術希望者も同時に増えて来ているように感じます。

まつ毛エクステンションを外してしまうと、急に目力が弱くなってしまいなんとなく寂しかったり、目が小さく見えたりするようです。

これを改善するためにアイラインを施術する方が増えています。

もしくはマスク生活になってメイクをほとんどしなくなったので、アイシャドウもアイライナーもせずに生活したいという方の需要も増えているようです。

私の施術の拘りは、テールと呼ばれる目尻の部分は入れません。レーザー除去の対象になる事も多く、年々たるみも出てきてお顔が変化してくる中でアイラインだけがずっと同じデザインのままに濃く残っていたら、あまりにももったいないですよね。

初回ではまつ毛とまつ毛の間を塗りつぶしていくようなイメージで施術していきます。人によっては初回もしくは二回目で様子を見ながら、中央部を少し太くして目を縦に大きく見せたり、眉尻側を少し太くして横に大きく見せたりする事もあります。

ごく自然な範囲の定着を望む方であれば、一回で御満足頂ける事が多いのがアイラインです。勿論二回あった方が線をムラなく綺麗に入れる事も出来ますし、より濃い色に発色させる事が可能です。

アイラインもリップ同様に痛みを心配される方が多いです。こちらも確かに、以前使用していた麻酔では痛みの表出が多かったのですが、現在麻酔を別のものに変えてからはうとうとされる方もいらっしゃるほど、痛みはかなり少ないものになった様です。

まとめ

アートメイクの技術面に関して、部位別に、未経験の方でも分かりやすいようなところまで少し掘り下げてお話しさせて頂きました。

ぼんやりとしたイメージは出来ても、実際の施術はどんな風にするのか分からなかったという方も、想像していただき、今後の施術に活かしていただけたら幸いです。

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Mei
看護師国試合格後アパレル会社へ就職。その後、臨床経験0のままで美容業界へ。美容ナース歴13年。現在はフリーのアートメイクナースや講師として活動中。